今回からWeb内覧会は「LDK」に入ります。
LDKは我が家の家づくりイメージを最も強く反映しています。1回目は、「新築にあたりどんな建築イメージを持っていたか」について説明します。
次回以降、キッチンや北欧家具についても紹介します。前回までのWeb内覧会記事はこちらです。
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1冊の本との出会い、北欧建築家との出会い
東京体育館プールからの帰り道、「カールハンセンに寄り道しよう」と外苑西通りを歩いている時に見つけた家具店(O-ROSE FURNITURE)。
ここで紹介された1冊の本が我が家の家づくりのターニングポイントです。
家づくりのターニングポイント
家づくりのターニングポイントとなった本は、"Scandinavian Modern Houses #1" (Living Architecture Publishing) です。

全部で#5までありますが、我が家のバイブルとなった#1には
- Arne Jacobsen別荘
- Alvar Aalto自邸
- Finn Juhl自邸
- Hanne & Poul Kjaerholm自邸
など、北欧家具の歴史に名を連ねる巨匠にまつわる建築が多数掲載されています。その中から我が家が最も感銘を受け、家づくりの目標とした建物が「Halldor Gunnløgsson 自邸」です。
懐かしさを感じる Halldor Gunnløgsson自邸
Halldor Gunnløgssonは、北欧ミッドセンチュリー期に活躍したデンマークの建築家。我が家がコンセプトとした彼の自宅は、1958年に建築された平屋住宅です。
1950年代は戦時中の物資不足もひと段落し、フランク・ロイド・ライトやミース・ファン・デル・ローエに代表される新しい建築スタイルを取り入れる動きが強くなります。
また、同時に日本の伝統的な建築様式や文化、芸術も、アメリカを通じてデンマークへ伝わります。Gunnløgssonも、日本建築の影響を受けた1人と言われています。
オープンプランという考え方
Jørn Utzon(シドニーのオペラハウスの設計者)が、1953年に建築した自宅で初めて導入した考えが「オープンプラン」とされます。
Jørn Utzonとの親交が深く、彼の才能に魅せられていたGunnløgssonも、自宅の設計でこのオープンプランを採用します。
独立した個室はバスルームと寝室だけ。キッチン・ダイニング・リビング・書斎は仕切りの無い大空間です。この空間をダイニングテーブル・ソファなどの家具で緩くゾーニングしています。
Gunnløgsson邸から考えた家づくりのエッセンス
家具を中心としたフリーアドレス
先ほどのオープンプランをLDKの空間作りで採用しました。
欲しい家具があり、その家具でどう過ごしたいかというイメージははっきりしていました。家づくりでは細かい仕切りは設置せず大きな空間だけを作り、細かいゾーニングは家具の配置で決めていきます。
最適な家具のある場所でやりたい事をする。家具を中心にしたフリーアドレスです。
配色設計、カラースキーム
Gunnløgsson自邸で使われている色は、ベースカラーでグレイ、メインカラーでブラック・ブラウン、アクセントでグリーンとレッドです。
基本のベース・メインは、同じくグレイ・ブラック・ブラウンで統一しました。壁・床でグレイを使い、窓サッシ・建具・キッチンはブラック、天井や木製家具でブラウンです。
問題のアクセントカラーは一旦保留にしています。外向きの大きな窓が無くカーテンは不要なので、生活し始めてから家具や全体のバランスを確かめながら考える事にしました。
平屋の中庭を囲む大窓

Gunnløgsson自邸の大きく広がる窓は再現できませんでしたが、平屋中央に18畳の大きな中庭を配置し、LDKを含む3方向に大窓を設置しています。
リビングの窓は、高さ2.4m 幅4m(方立を含む)と大きな窓を設置することで、暗くなりがちな平屋を明るく開放的にしています。
モミジやツツジ、苔のある和風な中庭です。昼は採光、夜は景観と1日を通してLDKに華を添えます。
チーク突板の天井

Gunnløgsson自邸は天井にパイン(松)材を貼り、構造の梁は黒くペイントされています。このイメージを再現してみました。
天井にはチーク突板を貼っています。2種類の厚みの板を交互に貼る事で、平らな天井に陰影を作っています。黒くペイントされていた梁は、ダクトレールを設置する溝で再現しています。
壁は左官壁を希望しましたが値段が高く断念しました。代わりにフリース(不織布)壁紙の「エコフリース」を全面で使用しています。質感が高くぱっと見では壁紙とは思えない仕上がりです。
Mix貼りの石目調床タイル

床はGunnløgsson邸では大理石を馬貼りにしています。天井のパイン材と無機質な大理石のコントラストが印象的です。この雰囲気を再現するためタイルを探して回りました。
最終的に選んだのは「リビエラタイル・アルティカ」。サイズが6種類あるので、ランダムに見えるように大きさをミックスした馬貼りで仕上げています。
我が家の「ランダムに見せたい」という要望を叶えるためのインテリアコーディネーターの力作です。設計間取りに、LDK・玄関・洗面・廊下・トイレなど全て割り付け指示が含まれています。
平屋で低く抑えた天井

Gunnløgsson邸でとても印象的な天井までの大開口窓は、中庭に面する大窓で再現しました。
ここで問題となったのはフルハイト窓のコスト。最近は高天井も増えており、ハウスメーカーによっては2.7m高の窓もオプション設定可能です。我が家も天井高2.7mを希望していました。
しかし、ただでさえ幅の広い特注窓を、2.7mのフルハイト窓にすると完全に予算オーバーでした。このため天井高を2.4mにしてフルハイトを取るか、2.7m天井の垂れ壁付き窓にするかの2択です。
悩みましたが、Gunnløgsson邸のシンプルな線構成を優先するために、2.4mの天井高でフルハイト窓を選びました。
ミニマリストの鬼才が生み出した家具

Gunnløgssonはケアホルムとの親交も深く、PK0・PK25・PK11など多くのケアホルム家具が並びます。この点もGunnløgsson邸が気に入った理由です。
我が家では籐編みのPK22、エレガンスレザーのPK80、ガラス天板のPK61が並びます。シンプルな線構成の内装とミニマリスト ケアホルム家具はとても良く似合います。
まだカーペットがないのでメリハリが効いていません。今後、シンプルな北欧ラグを購入する予定です。
全体を照らさず陰影を意識した照明

照明では、ビンテージのアンバー色のルイスポールセンを中心に、電球色の狭角スポットライトを多用しています。
全体を照らさず家具や部分的な動線だけを最低限で照らします。光と影のコントラストがはっきりするので、空間に立体感が出ます。
手元や部屋の隅はフロアライトで間接照明を入れながら、適宜調整していきます。
最後に
家づくりを始めた頃はどんな家にしたいかも分かりませんでしたが、1冊の本との出会いで建築のイメージがはっきりとしました。
過酷な自然環境の中で快適に生活する工夫がたくさんある北欧住宅は、日本の住宅建築でも参考になります。窓サッシなど気密断熱面でも日本より進んでいます。
日本でも高性能窓が増えており選択肢は十分です。一方で、建築士や建築会社によると、36畳の大空間にこれだけ大きな窓を設置して、耐震性と気密断熱を両立するにはまだまだ制約も多いそうです。
最後まで読んでいただき有り難うございました。次回は、LDKでチーフテンチェアを設置しているエリア「エンタメエリア」をご紹介します。
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