我が家の北欧家具紹介シリーズ、第2弾は北欧家具デザイナーの中でもファンの多い「ポールケアホルム」の「PK80」です。
徹底的に不要なものを削ぎ落とした結果、家具はこれだけシンプルで機能的になる。ネジ1本までこだわり抜いてデザインされたケアホルムの代表作です。
デイベッドという家具を設置するのは初めてですが、色々な使い方ができるユーティリティ家具。予想以上に便利です。日常的な使い方も紹介します。
前回の記事では、我が家のアイコン「チーフテンチェア」についてご紹介しました。
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「ここで漫画を読みたい」で始まったデイベッド

このPK80と出会ったのは表参道(今は外苑前に移転)にあったフリッツ・ハンセンの地下ショールーム。階段を降りた先に広がる世界に目を奪われました。
そこにはファブリック仕上げのPK80(中央奥)がありました。その他、PK22(右上2脚)、PK33(右下)、写真外にはPK61やPK31もありました。
その中で妻の目に止まったのはPK80。このデイベッドの上で、ワイン飲みながら漫画を読みたいとか…。店員さんも苦笑い。これが我が家のポール・ケアホルムとの出会いです。
強い信念を持った孤高のデザイナー

デンマーク美術工芸学校の教師だったハンス・J・ウェグナーに師事し、卒業後フリッツ・ハンセン社に入社。社内でのデザイン選考の結果で、意見の相違があり1年で退社したそうです。
その後、生涯に渡る家具製作のパートナー、アイヴァン・コル・クリステンセンと出会い、1956年、PK22とPK61を発表。翌年にはPK22がグランプリを受賞し、その名を世に知らしめます。
木製が多い北欧家具で、ステンレスフレームに、皮革、布、ガラスや石などを組み合わせ20点近い作品を発表。PK22のデビューから24年後の1980年、51歳の若さでこの世を去ります。
フリッツハンセン
セブンチェアやグランプリチェアでお馴染みの曲げ木(成形合板)技術を最初に確立したのがフリッツ・ハンセンと言われています。
ケアホルムが退社するきっかけとなった社内選考では、ケアホルムはPK0という曲げ木技術を全面に使用したラウンジチェアをデザインしています。(上写真)
PK0は社内選考で落選。一方で開発対象として選ばれたのが、アルネ・ヤコブセンのアリンコチェアです。ケアホルムはフリッツハンセンを離れます。
そのPK0ですが、1996年に数量限定でフリッツハンセンから販売されました。シリアル入りの実物を1度だけ目にしましたが、真っ黒なボディで目を奪われる存在感です。
リデザイン × ミニマリスト

今回紹介するPK80や代表作であるPK22は、近代建築家3大巨匠の1人に数えられるミース・ファンデル・ローエのバルセロナシリーズをリデザインしたもの。

上の写真にあるバルセロナデイベッドをリデザインしたものがPK80。ケアホルムのリデザイン手法は引き算で、丁寧に抽出された出汁のようにすっきりシンプルながら奥深い味わい。
ケアホルムがデザインするものには一点の曇りもない。彼がミニマリストの鬼才と呼ばれる所以です。
フリッツハンセン
ミニマリストとされるケアホルムですが、彼の自宅の庭は紅葉や庭石のある砂利敷きの和風庭です。屋内を飾る絵画では日本画も飾られています。
我が家のPK家具エリアの正面には、イロハモミジと垂れ紅葉が赤く染まる中庭があります。和モダン x 北欧家具を意識していた我が家にとって、ケアホルムの家具は必然の選択です。
PK80の特徴
ケアホルムはバルセロナデイベッドをどの様に認識しリデザインしたのか、PK80の特徴をまとめます。
最低限の直線で構成されるデザイン

我が家の設計時には空間を構成する線は最低限に留める事にこだわりました。空間がすっきりシャープな印象になります。
このデイベッドでも、フレームを構成するステンレスは全て直線的な板の組み合わせです。バルセロナベッドから彼が抽出したのは、直線で構成するシンプルな構造。
ステンレスの板厚は約1cm、脚やフレームの角は最低限の面取り程度でほぼピン角です。
驚くほど部品数が少ないデイベッド
フレームは、2組の門型フレーム(脚)、ベッドを支える2本のフレーム、それらを繋ぐ部品4つ、ボルトナット8セットのみ。
その上に樹脂製のベッド台座、台座とフレームを固定するゴムリング8本、ベッドマットレスが全ての部品です。
無駄なものを見せない工夫

フレームのステンレス板はサテン調でマットな仕上げ。悪目立ちはしないがレザーのマットレスとの質感の対比はしっかり表現されています。
フレームと脚を繋ぐナットは、表裏どちらから見ても同じ見た目になるようにデザインされた特注品。見ただけでは、どちらがナットかボルトか全くわかりません。
台座はマットレスより一回り小さく、マットレスに隠れて見えません。フレームの上にマットレスが浮いているようにも見えます。
バルセロナデイベッドとの違い

フレーム・台座・マットレスの耳を、まとめてゴムリングに挟み込んで固定しています。置くだけでは使用中にマットレスが動くので、マットレスの固定は必須。
バルセロナデイベッドの側面に見えているようなベルトを使えば、簡単に固定することができます。そうしなかったのは、直線を細切れにするベルトが許せなかったと想像しています。
最低限の部品点数で、直線的なイメージを阻害するものや不要な線を徹底的に排除しつつ、実用性を考え抜いたデザインだと考えます。
メーカーや販売店に関して
このPK80は現行品でフリッツ・ハンセンによるものです。ビンテージでは、パートナーEKC製もよく見かけます。
以前のフリッツハンセンの店舗は表参道駅近くにありましたが、2021年4月に外苑前駅から徒歩数分の所に移転。外苑西通りに沿いの開放的な建物で、隈研吾氏による設計。
この通り沿いにはカールハンセン&サンやボーコンセプトもあり北欧家具通りになりました。お隣の青山1丁目駅に行くと、バルセロナシリーズを販売するKnollのショールームもあります。
PK80を購入した店舗は、銀座1丁目駅から徒歩数分のところにあるDansk Mobel Gallery。トーンを抑え落ち着いた静かな店内に、フリッツハンセン、PPモブラー等の名作家具が並びます。
インテリアコーディネートにも力を入れており、我が家のインテリアでも沢山のアドバイスを頂きました。
同じ建物の1Fにはビンテージショップ Luca Scandinavia もあります。青山-銀座の家具探訪ルートは、ランチもしながら1日たっぷりと楽しめる定番コースです。
我が家のPK80との付き合い方
デイベッドというあまり馴染みのない家具ですが、使ってみるととても便利なユーティリティ家具です。
設置場所論争
どこに設置するかでは、妻との間で少々論争がありました。チーフテンチェアの背後(キッチン側)に設置していますが、これは妻とダンスクさんの意見。
中庭に面した大窓の前に設置したいと考えていましたが、LDKの通路が狭くなる事やレザーの日焼けといったデメリットがあり、敢えなく撃沈です。
デイベッドの使い方は?
PK80はホテルや美術館のロビーにも設置されています。3人ぐらいは余裕で座れる大きさなので、来客時はベンチ代わりに使用しています。
デイベッドなのでうたた寝もしますが、最近は多いのは洗濯物を畳むスペース。中庭から取り込んだ洗濯物をデイベッドの上で畳む。場所とサイズが丁度良い。購入前には想像もしなかった使い方です。
PK80と床材の話
我が家の床材はタイルですが、タイルとステンレス脚の組み合わせにはとても満足しています。重量のある硬いもの同士なので、見た目質感に違和感は全くありません。
ステンレス脚は柔らかい床材だと傷や凹みを作ります。傷防止パッドを付けていますが、使っていると少しずつズレてきます。それでもタイルには傷ひとつなく、相性が良い事の表れです。
追加であると便利だと思うもの
PK62という高さ17cmのローテーブルがあります。PK80の下にも収まる高さで、ベッド脇に置くとサイドテーブルとしても使えます。
グラスを持ってデイベッドに横にった時、グラスの置き場所がなく床置きする事もありますが、やはり直置きは気になります。ちょっとした台があると便利なので、PK62は早めに入手したい家具です。
最後に
今回はPK80デイベッドの紹介でした。ケアホルムらしい素材感にこだわったシンプルさが最大の魅力です。ナット一つをとっても考えられています。
デイベッドは日本ではあまり見かけませんが、海外の家具ではラインナップされています。ソファと違って背もたれがないので、設置場所や使い方は幅広く、我が家では大活躍の家具です。
最後まで読んで頂き有難うございます。次回は、人生で初めて購入したビンテージ家具、Nils Jonnsonデザインのサイドボードです。
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