平屋の不安#2 外から丸見え?新築時に考える目隠し・視線対策
- 2022年6月13日
- 2023年10月6日
「平屋の不安」の第2弾は「新築時に考える目隠し・視線対策」について紹介します。
平屋のデメリットでもよく挙げられますが、全ての部屋が1階に集まる平屋は、何もしないと外部から宅内が筒抜けになりやすい住宅。
プライバシーの問題だけでなく、在宅不在・ライフサイクルが把握しやすいので、防犯面でも注意すべきポイントです。
今回の記事では、平屋の目隠し・視線対策として新築時に考えられることをまとめます。併せて、我が家が実際に採用した対策の効果についても紹介。
平屋の新築を検討中の方、不安で迷っている方の参考になればと思います。
前回の記事は、「平屋の防犯対策」について紹介しました。
目次(クリックで開閉)
平屋は外から丸見え?
平屋で住んでみて感じる視線はどんなものか?
意外といろんな方向から見られています。平屋を取り巻く視線について紹介します。
通行人からの視線
まずは一番気になるのは通行人の視線。特に新築直後は、珍しい平屋住宅にご近所さんも興味津々です。
歩いてる人からすれば、覗いてる訳ではなく何となく見ていたら、カーテンが開いて住人とばったり。
生活空間が道路と同じ高さになる平屋住宅。こういった事は起こりがちです。
道路に面した和室で在宅仕事中、「平屋なんだ〜」という声が聞こえて外を見ると、犬の散歩中のご夫婦と目があって軽く会者。声も2階に比べればよく聞こえます。お互いちょっと気まずい感じです。
隣人からの視線
お隣さんの視線も気になります。見えないと思っていた場所が、お隣の2階のベランダからは丸見えだったり。
気づかないうちは良いですが、気づいてしまうと気になるところ。一度でも目が合うと、その後お互い気を使うことも。
我が家は中庭で食事する事も多く、お隣さんから見えていないか気になっていました。
妻がお隣さんと仲良くなったので、2階のテラスから我が家を確認。戻るや否や「見えてなかった」との報告。
下着も含めて洗濯物を中庭に干すので気になってたそうです。
周辺建物からの視線
特に都市部の平家の場合、周りに背の高いマンションがずらり。遠くからでも意外とよく見えるので気になります。
水平視線に強い天窓や中庭であっても、上からの視線は防げません。周囲の高層建築物、もしくは建築計画の位置には注意が必要です。
我が家の周辺にマンションはありませんが、高台の家からどれぐらい見えるかが気になってました。
実際に高台に上がって見たところ、屋根は全部見えますが、幸い中庭までは見えません。プライベート空間は守られてます。
家の中はNO、家の周りはYES
全方向からの視線に曝される平屋ですが、決して悪いことばかりではありません。
平屋は周囲の建物に埋もれるため死角が多く、空き巣・泥棒の標的になりやすいのも事実。
家の中・プライベートスペースへの視線は遮りつつ、建物への進入経路は周囲の視線に守ってもらえる配置・間取りが重要です。
目隠し・視線対策は土地選び・新築計画で
周囲の視線と上手に付き合う平屋には、周辺環境を含めた土地選びが最重要。
隣家との距離がとれるゆったりした土地が一番。周辺に高層建築がなければ、閉じる・開くの選択肢も広がり、開放感・防犯を両立した家を作りやすくなります。
さらに、広い土地を確保できれば、前面道路との間に庭を配置、植栽で自然な目隠しを作る事も可能。
平屋は「土地の広さ」「土地条件」「周辺環境」が重要とされますが、本当にその通りです。
平屋の目隠し・視線対策
ここからは、具体的な平屋の目隠し・視線対策について紹介。さらに、対策を行うにあたっての注意点も併記します。
中庭の設置
2階を支える必要がない平屋は、口の字やL字といった変則的な形の家が作りやすい建物。このため中庭との相性は抜群です。
「口の字で外に閉じた家」「開く方向を選べるL字・コの字」は、平屋の視線問題を手っ取り早く解決する方法です。ただし、注意点もあります。
口の字型平屋の注意点
- 口の字は建物外周が大きく敷地を広く使います。隣地境界距離や緑化率には注意
- 水の逃げ場がないと中庭がプールに。排水面の対策が必要。植物の生育にも悪影響なので、暗渠や排水計画は念入りに
- 口の字の最大のデメリットはコスト。基礎・排水・屋根周りでは結構なコストアップ
デメリットの少ないL字・コの字
- 安定した平屋でも、L字の家は重心バランスが取りずらい建物。耐震面の要望は事前にしっかり伝えておく
- 口の字に比べてL字・コの字は中庭に侵入されやすい。死角になりやすいので入念な防犯対策が必要
- 回遊動線の口の字に対して、L字・コの字は宅内動線が長い事がデメリット。間取り検討は動線設計を慎重に
縦・横滑り窓の活用
「通風」「採光」「出入り」と便利な引き違い窓。一方で、大きく開く窓は、目に留まりやすく視線対策は苦手。
実際に平屋で暮らして感じますが、気になる視線の大半は、意図的に覗き込んだ視線ではなくたまたま見えてしまった視線。
これを避けるには、縦滑りスリット窓や横滑りの高窓が効果的。小さく開き視線を避けつつ通気効果は十分です。
縦横滑り窓の注意点
- 気になる点は少ないですが、網戸の効果が低く掃除がかなり面倒なのはデメリット。割り切って家事代行を頼むとか
- 高窓のオペレーターハンドル(クルクル回して開閉する)は面倒、頻繁に開ける窓には電動がベター
深い軒を設置
上からの視線に対しては深い軒の出が有効。視線だけでなく、夏の強い日差しも遮りパッシブデザインとしても優秀です。
雨の日でも軒下を使えるので、雨音を聞きながらゆっくりするのも平屋ならではのスタイルです。
深い軒の注意点
- 壁芯から1mを超えた軒は建ぺい計算に含まれます。条件の厳しい土地は、意外と自由が利きません
- 屋根が大きくなり建物重量は増えます。軽い屋根材を選ぶなど、平屋の高い耐震性を損なわない対策も重要
- 猛威を振るう台風。深い軒は風の被害を受けやすい。特に海近くの土地は要注意
- 深い軒はカッコ良くて憧れます。しかし、屋根は現場施工なのでコストアップは予想以上
道路と高低差のある土地
「前面道路から一段上がった土地」「傾斜地のひな壇地」だと目線を遮りやすく、低めの植栽との併用でも十分な効果が期待できます。
さらに、道路との高低差があれば、平屋の弱点「水害対策」でも効果的です。
高低差のある土地の注意点
- 傾斜地は土砂崩れのリスクが高まります。ハザードマップを確認して、寝室位置をずらすなど万が一の対策も必要
- 全面道路との高低差があると、駐車場や玄関アプローチなど外構工事でのコストアップは避けられません
植木で目隠し
最近は里山風、雑木風の庭づくりも人気。窓周りを自然に隠せる植物を選ぶのも良い方法です。
特に株立ちの常緑樹をうまく透かしてやると、目隠しをしつつ木漏れ日も楽しめる素敵な庭になります。
夜はライトアップしても綺麗です。
植栽目隠しの注意点
- シマトネリコなど成長旺盛な常緑樹もあり、放ったらかすと大変。メンテナンス含め樹種選びは慎重に
- 落葉樹は一気に葉を落としますが、常緑樹は年中パラパラ落ちます。常緑樹の方が返って面倒という声もあります
- 在不在の手がかりになるのでライトアップはタイマーで定時点灯。また、樹木の影が家にかかると、暗闇に紛れられます
縦ルーバーやフェンスの設置
縦ルーバーやフェンスは、外からの視線を遮りつつ新鮮な空気を取り込める便利なアイテム。
水平基調の平屋住宅に縦ルーバーで変化をつけると、見た目が一段とカッコよくなるのも人気の理由です。
縦ルーバー・フェンスの注意点
- 完全に外の視線を遮ると、侵入時の隠れ場所になります。間隔広めのルーバーと樹木の目隠しを併用すると効果的
- 屋根近くの構造物は屋根に上がる足がかり。せっかくの中庭も、侵入されると周囲の目が届かない空間です。ルーバーの配置に注意
我が家の事例で確認
最後に、我が家で採用した視線対策の効果を紹介します。実体験ですので、新築計画の参考になればと思います。
中庭の効果
想定していた通り、中庭の効果は抜群です。
- 中庭の3面に大窓を設置していますが、どれもカーテンは設置せず常にフルオープン
- 大きな中庭なので日差しもしっかり。視線を気にせず洗濯物を干せ、強風でも意外と中庭内が穏やかなのもメリット
- 排水対策も十分。ゲリラ豪雨でもプールにならず、モミジやツツジも元気に育ってます
加えて、「外を内に取り込む開放的なデザイン」や「セカンドキッチン(ダイニング)」など使い方は自由自在。
やはり、平屋に中庭はおすすめです。
高低差の効果
両脇は2階建ての住宅ですが、ひな壇地なので下側隣家の視線は気になりません。
中庭4面のうち1面を壁にしてますが、上側隣家からの視線対策としても役立っています。見えるのは白壁に映えるモミジまで、宅内は見えない配置です。
壁の裏側に水回りを配置しているので、来客に対してもプライベートスペースを隠すことができます。
よく考えられた間取です。
植木の目隠し効果
土留めと目隠しを兼ねたトクサが伸び揃い、前面道路に対して2m(トクサ1m+高低差1m)の目隠しとして機能しています。
さらに、トクサと窓の間には梅の木・常緑ヤマボウシ・シマトネリコが、自然な里山のような風情で視線を遮ります。
植えられる本数が限られるので、日常使う寝室を遮るように重点的に配置。使用頻度が低い客間は緩めにとメリハリをつけています。
追加したいのは縦ルーバー
追加で実施したい対策は、寝室掃き出し窓前の縦ルーバー。今後ウッドデッキを設置する予定なので、デッキエリアの目隠しです。
さらに、水平基調の外観なので縦のアクセントがつけられます。
しかし、気になるのは防犯面。縦ルーバーだと足場にはなりませんが、屋根近くに構造物を作る事は不安。
デッキを設置する頃には結論を出す予定です。
最後に、平屋の視線対策
平屋と視線に関して、一般的に指摘されること、視線対策、我が家での対策効果を紹介しました。
実際は、2階建て住宅でも1階リビングであれば視線問題はついて回ります。その意味では、視線問題は平屋固有ではありません。
ただし、少数派の平屋はどこに建てても目立つのは事実。結果として、外の人と目が合う瞬間が多いのかもしれません。
苦労して建てる平屋です。開放的な部分・視線を遮る部分にメリハリをつけ、上手く周囲の視線と付き合える平屋を作ってください。
最後まで読んで頂き有難うございます。次回の平屋記事は「平屋の不安#3 平屋には勾配天井?我が家が標準天井高を選んだ理由」です。