携帯電波の入らない家(解決編)フェムトセルで電波はどれだけ改善したか?
- 2022年1月30日
- 2023年9月24日

我が家は「携帯電波が入らない家」、新築の途中、窓・屋根・外壁が出来上がった時に発覚しました。フェムトセルの導入条件は、新築住宅には複雑でなかなか手続きが前に進みません。
引っ越しから3週間遅れでフェムトセルが稼働し、宅内でも電話を使えるようになりました。我が家は大きな中庭のある変則的な間取り。Wi-Fiも含めて電波を使う通信にはハードルが高いようです。
目次(クリックで開閉)
設置したフェムトセルについて
フェムトセルという機器ですが、簡単に説明すると家庭用の超小型基地局です。名前の通り、宅内に専用の基地局を設置することになります。
通常の携帯通信だと、基地局から携帯会社のネットワークに入ります。宅内にフェムトセルを設置する場合、フェムトセルからインターネットを経由して携帯会社のネットワークに入ります。
レピーターとフェムトセルの違い
宅内の電波状態が悪い場合、キャリアのカスタマーセンターに連絡し電波改善を依頼します。その際、最初に提示されるのがレピーターです。
レピーターは宅内で補足できる弱い外部電波を増幅して電波状況を改善する機器。電波が捕捉できない場合、宅外ドナーアンテナを設置し有線で電波を引き込み増幅する方法を提示されます。※
「レピーターの電波=外部の電波」に対して、「フェムトセルの電波=宅内基地局の専用電波」という点で、レピーターとフェムトセルは全く別の電波改善機器です。
※同時にフェムトセルも提示されるので、電波調査で派遣された調査員と話し合い方法を決めます。我が家の場合、事前説明でレピーターでは無理との結論が出ており、事実上フェムトセル一択でした。
届いたフェムトセルの仕様
届いたフェムトセルは少し大きめのルーターぐらいのサイズ。公式HPにはW4.5cm × D17.5cm × H18.5cmと記載がありますが、脚を取り付けるとW7.5cm H23cmになります。
三菱電機製で型番はBS-3101形と記載されています。ドコモとの話の中ではXi(クロッシー)フェムトセルと呼ばれ、LTE・FOMAの電波を発信します。
設置に関する注意点
設置マニュアルによると、3点設置上の注意書きがあります。
- ONUの直下に設置する
- Wi-Fiルーターとは最低80cm離す
- 窓際ではなく、出来るだけ建物中央に設置する
1: ONUのLANポートが1つしかない場合、電波調査時に頼めばハブも一緒に届きます。届いたのはELECOM「EHC-G03PA-SB」という2Pスイッチハブ。フェムトセルとハブで電源が2つ必要です。
2: 我が家は、戸棚の最上段と最下段、垂直方向で約2mの距離を確保。戸棚中央に仕切りがあり、水平に80cm離す事はできません。80cmは意外と距離があるので、依頼前に設置場所を考えておく方が良いです。
3: ハードルが高いのはこれ。Wi-Fi含めて電波は円状に広がります。我が家は光コンセントの都合でLDK隅の設置ですが、ニッチ棚・光コンセント・電源を家中心に作るとWi-Fi・携帯両方の電波が安定します。
調査員に聞いた注意点は、電波の切替わりで通信が切れるため、外部・フェムトセル電波の混在はNG。実際に我が家で、通話しながら玄関を出ると通話が途切れます。もし、宅内でこの状態だと使い物になりません。
フェムトセル導入前後の電波状況
フェムトセル導入前後の電波状況を、iPhoneのフィールドテストモードで確認しました。(iPhoneでは*3001#12345#*を通話アプリで発信するとこのモードを使えます。)
電波強度はRSRPの値で比較。単位はdBmで-40〜-140までの値をとり、値が大きい(0に近い)方が電波強度が強くなります。明確な基準はわかりませんが、-115が使用可否の閾値だそうです。
確認ポイントは下の間取り図に示します。

自宅周辺の電波状況
まずは自宅周辺の電波状況を確認します。普段、スマホを使う上では大きな障害は感じていませんが、全体的に弱めであることは間違いなさそうです。
計測場所 | 電波強度(RSRP) | 接続バンド | 計測場所 | 電波強度(RSRP) | 接続バンド |
❶ | -105 dBm | 19 | ❸ | -108 dBm | 19 |
❷ | -102 dBm | 19 | ❹ | -108 dBm | 19 |
接続バンドの19は800mHz帯の電波を使い、ドコモではプラチナバンドと呼ばれます。
そして800MHz帯(バンド19)は最大75Mbpsと速度は遅いのですが、ドコモのプラチナバンドと呼ばれています。理由は電波が届きやすく、広い場所をカバーできるためです。地方で多く使われている「エリア対策用」とも言われる周波数帯が800MHz帯です。都市部でも、ビル内など電波が入り込みづらいところにはこの周波数帯が利用されています。しかし海外ではそれほどポピュラーな周波数帯ではないため、残念なことに対応している端末はそれほど多くありません。
DTI https://dream.jp/mb/tips_m/sim03.html
導入前の電波状況
導入前の宅内の電波状態です。やはりフェムトセルがない状態だと、宅内の電波強度は全く使えないレベルです。
計測場所 | 電波強度(RSRP) | 接続バンド | 計測場所 | 電波強度(RSRP) | 接続バンド |
① | -130 dBm | 19 | ⑥ | -126 dBm | 19 |
② | -130 dBm | 19 | ⑦ | -126 dBm | 19 |
③ | -129 dBm | 19 | ⑧ | -128 dBm | 19 |
④ | -130 dBm | 19 | ⑨ | -112 dBm | 19 |
⑤ | -126 dBm | 19 | – | – | – |
導入後の電波状況
フェムトセル導入後の電波状態です。大幅に電波状態が改善しています。また、接続バンドも2.1gHzに変わります。
計測場所 | 電波強度(RSRP) | 接続バンド | 計測場所 | 電波強度(RSRP) | 接続バンド |
① | -78 dBm | 1 | ⑥ | -109 dBm | 1 |
② | -78 dBm | 1 | ⑦ | -109 dBm | 1 |
③ | -78 dBm | 1 | ⑧ | -109 dBm | 1 |
④ | -78 dBm | 1 | ⑨ | -112 dBm | 19 |
⑤ | -78 dBm | 1 | ❷ | -99 dBm | 1 |
最も高い周波数帯である2.1GHz帯(バンド1)は日本全国に基地局があり、速度も速く、ドコモだけでなくauもソフトバンクもLTEとして利用しています。さらに海外でも広く使われている周波数帯なので、海外の端末でも対応している製品が多いのが特徴です。また、日本では2GHz帯と呼ばれることもありますが、これは2.1GHz帯と同じと考えて差し支えありません。
DTI https://dream.jp/mb/tips_m/sim03.html
キャリア毎の対応状況
ここからはキャリア毎の対応状況をまとめます。最近は格安プラン・格安SIMも多いので、格安SIMでの状況も確認しました。
大手4社の状況
ドコモ・ソフトバンク・auの3キャリアはレピーター・フェムトセルともに対応しています。前半の手順の通り、電波改善を要請し、電波調査を経てフェムトセルへ辿り着きます。
楽天のみ状況が異なり、フェムトセル(楽天カーサ)を調査なしで申し込む事ができます。ただし、楽天モバイルの場合、楽天LinkがあるのでWi-Fiだけでも十分かもしれません。
導入費用はいくら?
楽天モバイルのみ事務手数料が3,000円かかるそうです(ただし、ポイント還元)。他のキャリアは無料で借りる事ができます。ただしドコモの場合、破損時は損害賠償(47,100円)と記載があります。
設置に伴う電気代、指定ネット回線費用は、設置する側で負担します。フェムトセルを使った通話・通信は通常の基地局通話・通信と同じ扱いなので、通話・通信量は契約通り請求されます。
サブブランドでの使用可否
ahamoドコモのカスターセンターから手続可能です。ドコモからahamoに乗り換えた場合でも、使用中のフェムトセルに関する手続は不要と記載があります。便利です。
https://www.nttdocomo.co.jp/area/radio_solution/
povo以前は具体的な記載はありませんでしたが、現在はpovo電波サポート24から手続を行い、フェムトセルを借りる事ができます。auと同じフェムトセル(auVoLTE)です。
※auの場合は電波調査実施、povoの場合は調査無しになっています。結果借りる物は同じですが、サービスプロセスはオンラインプランらしい線引きをしています。
LINEMO Y!mobileLinmo・Yモバイル共に電波改善としてフェムトセル(ホームアンテナFT)、レピーター(ホームアンテナ3)を借りれるそうです。実際に借りている方の記事がありました。
ただ、必要な手続手順があるようです。まずは、Linmo・Yモバイルのカスタマーセンターに確認し、説明に従って進める必要があります。公式HPに記載がないので、とても貴重な情報です。
これで3キャリアのサブブランドも、全てフェムトセルを導入できます。
格安SIMでの利用可否
格安SIMに関しては、残念ながら状況変化なくフェムトセルの導入はできません。
唯一、UQ Wimaxは宅内アンテナという名称のフェムトセルを導入できます。また、Wimax Home01というレピーターもあるようです。ワイドレンジアンテナという特許技術で外部電波の受信・宅内放射が優れるそうです。
同じ電波なら相乗り
家族と同居している場合、家庭内に4キャリア・サブブランド契約がありフェムトセルを導入できれば、同じ電波の格安SIMで相乗りする事はできます。
例えば、父親のドコモ契約でフェムトセルを導入。家族がマイネオやIIJのドコモ網で相乗りなど。格安SIMで使う方法はこれぐらいです。
※ただし、フェムトセルのデメリットとして、電波を捕捉できれば見ず知らずの人もただ乗りできます。電気代・ネット回線費用を負担していない人が無断で使う事になります。
最後に
Wi-Fiや携帯電波など、新築してここまで電波問題に悩まされるとは思いませんでした。
地域柄、携帯電波自体が弱いのも事実ですが、高気密住宅やLow-Eガラスといった最近の住宅性能も一因です。我が家は外向きの窓も少なく、幾つもの要因が重なって起きた問題です。
しかし、コロナ禍・働き方に伴う田舎移住・住宅の高性能化は今後も続きます。また、5Gは基地当たりのエリア面積がさらに狭くなるそうです。今後もフェムトセルの需要は増えてくると予想します。
公共の電波に対しては厳格な規制が必要な事は理解できます。一方で、携帯電話・スマホが生活インフラとなった昨今、もう少し汎用的な仕組みができると格安SIMを含めて、活用の幅は広がると感じました。