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Web内覧会「中庭のある家」の「回遊廊下」、生活・来客動線の分析と廊下幅

今回からWeb内覧会は「廊下とロフトにあがる階段」です。

間取り作成の本を読むと「廊下を増やすと生活スペースが減る」「廊下はできるだけ減らすべき」といった説明を目にします。

一方で、中庭を中心とした回遊動線では、廊下を無くすと生活空間と移動動線が混在し落ち着かない空間になります。例えば、

  • ランドリーと移動動線が混在すると、身支度の最中、洗面に立つ背後を家族が行き来する
  • 来客がトイレへ行くために、最短ルートだと生活空間を通る事になる

空間を独立させ落ち着きを確保し、来客の生活空間への踏み込みを防ぐため、廊下を緩衝空間として設計しています。

役割を分析しそれぞれの廊下幅を変更、日常生活の利便性のため照明計画にも力を入れています。回遊廊下の1回目は「動線」と「廊下の設計」について説明します。

廊下幅の異なる3つの廊下

中央に中庭のある口の字の間取りです。中庭を囲む「3つの廊下」と「LDK」で回遊動線を構成しています。説明のため、各廊下に通し番号を付けています。

中庭のある家

3つある廊下ですが全て幅が異なります。設計当初は全て同じ幅でしたが、廊下ごとに使用状況が異なると考えて幅を変更しました。

間取り検討時のゾーニング

回遊動線はどこを通っても目的の場所に辿り着き便利です。一方、平屋だと2階建ての2フロアを横に並べるため移動距離が長くなる事が難点。ゾーニングと動線設計が重要です。

中庭のある平屋
  • 生活動線:下半分にキッチン・風呂・ランドリー・WIC・寝室・トイレを一直線に並べてます。日常生活が最短距離で済む間取りです。
  • 来客動線:LDK・客間、どちらも中庭を正面に眺める配置。滞在時間・訪問目的・親密度によって、客間和室(長・重・親)・LDK(短・軽・疎)へと振り分けます。
  • トイレ動線:トイレは1つしかないので、来客動線と生活動線の境目に設置。客間は長時間滞在を前提としているので、トイレへのアクセス性は重要。

平屋の回遊動線では全ての空間が連続しメリハリが効きません。ゾーニングで各空間の役割を明確にし、廊下を活用した動線設計を行うと、日常・来客のメリハリがつきます。

来客を迎え、日々の荷捌きも行う廊下①

日々の生活、来客時の印象を考えて幅105cmまで広げました。

玄関入って直ぐの廊下で、買い物や仕事帰りの荷物を脇に仮置きします。重量物をキッチンまで移動する時は、平台車へ積むなど日々の生活では荷捌き場になります。

一方で、来客時は正面の中庭が迎える我が家の顔ともいえる空間です。立ち止まって中庭を眺めながら話をする事も想定すると、ゆとりをもった廊下幅が良いと考えました。

中庭を眺めながら客間に続く廊下②

回遊動線

廊下②は客間和室へ続く動線で、客間から中庭を眺める重要な空間。廊下幅は最も広く121cmに変更しました。

町屋の通り土間をイメージしています。将来的には和室の障子を組子引戸に変えたいと考えています。客間から組子を通してツツジの花や紅葉を眺めることができます。

来客中心の廊下ですが、普段は中庭に干した洗濯物の避難場所にもなっています。急な雨の時は物干しごと洗濯物をこの廊下に取り込みます。

日常生活で頻繁に使う生活動線、廊下③

回遊動線

朝は寝室から洗面・LDKへ、夜はLDKから風呂・寝室に向かう動線。ランドリーから洗濯物を移動する動線でもあります。

LDKからトイレへ向かう動線でもあり、日常的に使用頻度の高い廊下です。来客時はLDKからトイレに向かう時は来客の目にも触れます。

実用性や多少の装飾も考えて幅100cm以上を希望しましたが、建ぺい・境界距離の都合で85cmが最大幅でした。

各廊下、設計上の特徴と使用状況

LDKと各廊下、中庭を一つの大きな空間として考えました。一体感を出すため、床・壁・天井は全て同じ仕様です。

廊下①の設計仕様と使用状況

回遊動線

週1回のまとめ買い後は玄関框を上がったところに全ての荷物を置きます。ストック品はロフトの納戸、日用雑貨はランドリー、食料品は冷蔵庫・パントリーへと振り分けます。

来客時の印象も重視しましたが、普段はもっぱら荷捌き場として大活躍です。小さなスツールがあるとさらに便利だと思います。

廃止を希望した框ですが、靴の脱ぎ履きにも活用できて便利です。玄関横のSICにはホウキや熊手といった掃除道具も収納。砂埃を防ぐ上でも効果抜群です。

窓枠収まり

玄関正面には方立(窓中央の支柱)を含めて3.5mを超える大きなFIX窓があります。天井のチーク、床タイル、エコフリース壁紙が窓際まで施工される4方枠無し仕上げ。スッキリします。

廊下の照明は、玄関照明との干渉、窓への映り込みを避けるため2灯のウォールランプのみ。中庭に設置した間接照明の灯りもあり、夜でも予想以上に明るい空間です。

20畳のロフト収納へ上がる階段

ロフト階段

この階段の上には20畳の大型ロフトがあります。SIC・WIC・パントリー・リビング戸棚といくつか収納はありますが、最も使用頻度の低いものを収納するのがロフトです。

設計当初は無垢階段でしたが、コストダウンのために変更。コストダウンで採用しましたが、来客からは質感が高いと評判です。

14段のストレート階段で幅は79cm。ウッドワンのセットオン階段で、色はウォールナット。手摺は金物のみカワジュンのアイアンブラックを採用。

ロフトへ上がる階段については自治体によって対応が異なります。

我が自治体の場合、固定階段設置の条件が「建築基準法準拠の階段」です。このため、階段には手摺が必須となるそうです。

可動式の梯子しか認めない自治体もあるそうです。収納としての利用が前提なので、固定階段の方が安全に昇降できるはずですが…。

廊下②の設計仕様と使用状況

客間への動線のためデザイン性を重視して121cm幅と最も広い廊下です。テラスドアを含めて幅4mの大開口窓を通して中庭を正面に眺めます。

回遊動線

内装は他と同じですが、悩んだところは天井材とタイルの流れ方向。廊下の奥行き感を出すためには、廊下長手方向にしたかったのですが、廊下①③と直交するため短手で妥協。

住んでから感じた事は、和室から中庭を眺める時は短手の流れが正解。中庭に向かって天井・床が流れるので奥行きや立体感が際立ちます。この仕様でよかったです。

回遊動線

客間として設計した和室ですが、日常的には床生活ができるセカンドリビングです。小上がりに腰掛けたり畳に横になったりと、和室は日本人には便利な空間です。

幅が広いので大きめの洗濯物干しも設置できます。普段は中庭に干していますが、急な雨など急いで取り込む時はこのスペースが便利です。

照明は各部屋の入り口にダウンライトを設置。照明位置は固定なので、天井材をくり抜いた一般的な仕様です。ここも中庭の間接照明が入るので明るさは十分です。

廊下③の設計仕様と使用状況

3つある廊下のうち最も狭い85cm幅。日常的に使う動線なのでもう少し広い方が便利ですが、土地の都合もあり断念。

この幅での行き違いは互いに避けないとぶつかります。主寝室からWICを通って洗面に抜けるサブ動線もあるので、キッチンからランドリー入り口までが一番窮屈です。

一方で幅が狭い分、ダウンライトの陰影がはっきりと浮かんで綺麗です。スケッチ絵のような軽い絵画で壁面を飾り、もう少し楽しい空間にする計画。

照明の設置方法はダクトレール式。照明器具が張り出さないように、天井を幅・高さ10cm掘り込んでダウンライトが溝に収まるように設計。

回遊廊下の動線設計、まとめ

口の字型の間取りはサンプル間取りも少なく、動線設計での注意点などの情報は限られています。回遊するための移動動線が必要な点も、この間取りを特殊にする要因です。

「目的の場所に複数動線で到達できる事」や「外部視線を遮り中庭を含めた開放的な大空間を作れる事」は、この間取り特有のメリットです。

日常生活や来客対応をイメージして明確なゾーニングを行い、適切な移動動線を設置すれば、口の字固有の柔軟性を生かした間取りになると感じます。

最後まで読んで頂き有難うございます。次回は、回遊動線での照明設計について説明します。

右回り・左回りどちらの回遊でも照明操作が必要です。また、途中の部屋での出入り時にも照明操作が必要です。全てを満たすと家中スイッチだらけになります。

スイッチは最小限に留め苦労せず照明を点消灯できる事。回遊動線の照明設計は予想以上に複雑でした。

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