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我が家の北欧家具紹介#1 家づくり、始まりの椅子「チーフテンチェア フィンユール」
夫婦で家づくりを考え始めたのは5年前のゴールデンウィーク。マンション探しに疲れ、思いつきで訪れた平沼住宅展示場が家づくりの始まりです。
しかし、漠然と戸建という希望はあっても、具体的な家のイメージはありません。「マンション選び」と「家づくり」の大きな違いを感じました。
そんな頃、ハウスメーカーOB訪問の帰り道、イメージ作りの一環になればと立ち寄った大塚家具でこの椅子と出会います。
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我が家の始まりの椅子「チーフテンチェア」
この椅子が似合う家を作りたい。そう思った瞬間から家づくりの歯車が強く噛み合い始めました。我が家にとって、家づくりの「始まりの椅子」です。
家具の彫刻家 Finn Juhl
この椅子のデザイナーは、ヤコブセンやウェグナーと並び、20世紀中頃の北欧ミッドセンチュリー期を代表する巨匠、家具の彫刻家と呼ばれるフィンユールです。
フィンユール初期のデザインは、ポエトソファのようにオブジェに直接脚をつけたようなデザイン。その後、#45チェアのような3次元曲線を組み合わせたフレームの流麗なデザインに変遷します。
いずれものデザインも当時のデンマークでは評価されなかったそうです。その後、彼の作品はアメリカで評価され、それに伴い本国での評価も上がり巨匠と呼ばれるに至ります。
チーフテンチェアのバックグラウンド
フィンユールの黄金期、1949年に発表されたラウンジチェア。フィンユール自身が自宅の暖炉の前でくつろぐためにデザインしたと言われています。
同じ年の展示会で国王が自ら着座したことで脚光を浴びた一方、肘掛け下地の素材に物言いがつき、博物館購入の選考対象から外されたそうです。
フィンユールは建築家なので椅子も構造建築として捉えているように感じます。独特な幕板や貫の配置を見ると、「リデザイン」を軸とする当時のデザイン思想とは切り口が違います。
チーフテンチェアの特徴
フィンユールを代表するこの椅子ですが、短時間で細かいデザインまで完成したそうです。設計する前に使用場面、座り方、デザインがほぼ出来上がっていたとされます。
フィンユールのデザインアイコンとも言える特徴をほぼ全て網羅しており、幾つもの椅子をデザインし、積み上げた理論と経験で行き着いた、フィンユールの集大成です。
頑丈さと柔らかさの両立
この椅子の特徴は、どんな座り方をしても「びくともしないほど頑丈」で「体への当たりが柔らかい」こと。荷重を受け止める力強いフレーム組み、3次元曲面で構成された大きな背板・座面・肘掛けによるものです。
暖炉の前でどう座るか、体と椅子どのよう接するか、どこにどれだけの力がかかるか。こういった事が完璧にイメージ出来ていたはずです。
三角で構成するフレーム
後脚、背板を支えるフレーム、貫で三角形を作っています。トラス構造など三角形はとても安定した構造とされます。古代エジプトの家具を研究し、ツタンカーメンの椅子から着想したそうです。
これは同時期にデザインされたエジプシャンチェアとも共通しています。三角形の頂点には角のような丸い突起があります。飾りですが、これもエジプト由来のデザインアイコンです。
デザイン性のある幕板
幕板のデザインも特徴的です。通常の幕板は前後脚をつなぎますが、この椅子は座面下の前面幕板と後脚を繋ぎます。このハの字配置の幕板で座面を支えながら椅子の剛性を保っています。
フィンユールの椅子は、座面下の構造にこだわりが詰まっていて、ファイアーサイドチェアの十字の貫や#45の逆ハの字の貫も特徴的です。
幕板とは?
多くの椅子には、座面下に4本の脚を連結し四角形を作るフレームがあり、これを幕板と呼びます。幕板の下に、貫と呼ばれる脚を連結する部品が追加されることもあります。
浮遊感を演出する面構造
フレームとの接合部を小さくすることで、背板、座面、肘掛けが浮いたように見えるデザインです。フィンユールのデザインアイコンで、多くの椅子で同様のデザインが見られます。
このチーフテンチェアだと、肘掛け・座面はフレームの両脇を削り接合部だけを凸状にしています。接合部が面材に隠れて浮いているように見えます。
メーカー・販売店など
フィンユールのオリジナルの多くはNiels Vodder社という家具工房で作られました。その他、Bovirke社、France & Son社などモデルによっていくつかオリジナルの工房もあります。
現在は、House Of Finn Juhl(旧Onecollection/旧旧Hansen & Sorensen)が、ほぼ全てのライセンスを持っています。日本のキタニも一部生産していましたが、今年10月に生産終了となりました。
日本では浜松にあるDanish Interiors社が正規ディーラーとして輸入していますが、このチーフテンチェアを含む一部のモデルは、日本で生産されています。109チェアもそうです。
小売では、我が家もお世話になっているIDC大塚家具での取り扱いが充実していおり、ほとんどの店舗でフィンユールコーナーを設置しています。大手ならではの柔軟な支払い方法も魅力です。
我が家にとってチーフテンチェアとは?
我が家の家づくりを大きく動かしたチーフテンチェアですが、なぜこの椅子を選んだのか、実際にどう使っているかを紹介します。
この椅子のどこに惹かれたのか?
圧倒的な存在感です。広い大塚家具の売り場の中で、この椅子のオーラは抜群に輝いていました。実際に座ってみてその抱擁感にも驚きました。
その時は、値段を見て諦めましたが、その存在感が日に日に大きくなっていきます。結果、間取り検討の頃には、この椅子が間取りの中心にありました。
どんな使い方を考えたのか?
大きくて深く座れるラウンジチェアなので、中庭の正面に設置してゆっくり過ごすイメージでした。週末、お酒を飲みながら座れると最高だと思っていました。
実際に自分達で作った間取りの原案では、中庭の前にチーフテンチェアが2脚並んでいます。
実際の使い方は?
壁面に向けて設置し、プロジェクターで映画やテレビを見るため使っています。今年のオリンピック・パラリンピックでは大活躍でした。
多い時は映画3本ぐらい見ていますが、座面が大きいので色々な姿勢で座る事ができます。フィンユールの写真にもありますが、足を肘掛けに乗せて体を伸ばす事もできます。
もう一度家を建てるとしても購入するか?
北欧のラウンジチェアであれば、チーフテンチェアを選ぶ可能性が高いです。この大きさのラウンジチェアだとウェグナーのベアチェアも選択肢ですが、座り方の自由度はチーフテンチェアならではだと思います。
ポルトローナ・フラウ
妻は、もう一軒となればイタリア系の家具も良いといっています。Poltorona Frau(ポルトローナ・フラウ)がお気に入りです。確かにレザーの質感は抜群です。
テレビドラマ「天国と地獄〜サイコな2人〜」でも登場しました。半年ほど前ですが、横浜鶴見にある大塚家具アウトレットでは、撮影に使われた椅子が販売されてました。
最後に
我が家の家具紹介、第1回はチーフテンチェアを紹介しました。フィンユールの現行品でも最も高い椅子の1つですが、価格に見合った価値のある椅子だと思います。
次回の家具紹介は、もう1人の我が家の主役デザイナー、Poul KjærholmのPK80です。