新築住宅の5軒に2軒が太陽光を導入するそうで、10年前に比べるとかなり普及したと感じます。FIT制度の効果は絶大です。
御多分に洩れず、我が家も太陽光設置を考えていましたが、目的は売電というより災害対策。災害時でもエネルギーを作れる点に魅力を感じていました。
最終的に新築時には導入せず先送りましたが、検討過程で気になったのは「北下がりの片流れ屋根と太陽光の関係」です。
今回の記事では、新築検討時の情報をもとに以下の事を紹介します。
この記事のポイント
- 太陽光を設置する上での北下がり屋根のデメリット
- 北下がり片流れの大屋根にはどれだけのパネルが載るか?
- 北下がりだとどの程度の追加コストがかかるか?
- 現実的な積載量だと追加コストどれぐらいか?
こんな方におすすめ
- 新居では太陽光発電を導入したい
- どれだけの太陽光が積載できるか知りたい
- 太陽光の設置費用を回収するポイントを知りたい
- 太陽光を設置する屋根の注意点を知りたい
災害対策としては「簡易V2H」を設置。ハイブリット車の非常給電システムを使う仕組みで、新築なら格安で導入可能。こちらからどうぞ。
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北下がり屋根、太陽光でのデメリット
延べ床面積が同じ2階建てと比べると平屋の屋根の大きさは2倍以上になります。
費用のかかる大屋根は平屋のデメリットとされる一方で、太陽光パネルの設置では大きなメリット。
特に南下がりの片流れ屋根は広さ・角度共にパネル設置には最適です。
問題は、我が家のような北下がりの片流れ屋根。太陽光パネルを設置するには逆勾配がネックです。
周辺環境と日射状況
我が家の両隣(東西)は2階建て住宅。平坦地だと平屋は埋もれてしまい日射量は減りますが、幸い西に向かって下がる「ひな壇地」。
朝・夕に屋根の一部が隣家の影に入りますが、大半は1日を通して十分な日射。大きな屋根も幸いし条件の良い場所を選んでパネルを設置できます。
残る問題「逆勾配」を解決するには「架台」を使って補正しますが、この架台がなかなか曲者でした。
影を避けるために積載量減
40坪の平屋に全周90cm以上の軒を出し屋根面積は56坪。10kWhで約15坪らしく単純計算で40kWh近く設置できる面積です。
しかし、「架台」を使ってパネルを立ち上げる場合、パネル裏の影に他のパネルが入らないように間隔をあけて設置します。
この結果、屋根勾配に沿ってパネルを詰めて設置できる南下がりに比べると、架台を使う北下がり屋根は積載量が少なくなります。
重量は重く、重心は高く
太陽光パネルは通常架台を含めて1kWあたり100kg。逆勾配用架台だと部材が増えるのでこれより重くなります。
さらに重量のあるパネルを斜めに立てて設置するので重心も高くなります。軽量な金属屋根にしましたが、ちょっと残念な感じです。
耐風性など家の構造も考える必要があり、ハウスメーカー以外に依頼しづらくなります。相見積もりが取れないのもデメリットです。
意外と高い架台のコスト
架台・設置コストも追加になります。これが予想以上に高くパネル1kWあたり3万円ぐらいのコスト増でした。
太陽光パネル1kWあたりの設置単価は28万円程度(2022年)とされており、架台費用で1割余分にかかる計算です。
南下がりに変更する?
なぜ、こういったデメリットがあるのに北下がりの片流れ屋根を選んだのか?
理由は、南下がり+パネルだと、パネルが正面の道路から丸見えになるため。平屋は屋根と目線の高さが近いので、パネルの存在感が強く特に目立ちます。
5kWh程度のパネルであれば、緩勾配の切妻屋根や四方屋根にして屋根周りを目隠しで囲む方法もあります。
屋根施工・目隠しで余分に費用はかかりますが、陸屋根のようなすっきりした見た目になります。予算不足の我が家には無理でした。
小さな発電所?最大積載量プラン
まずは、最初に提示された最大積載量プラン。
設置効率が悪いとはいえモジュール42枚で11.9kWの積載量。10kWを超えるので産業用扱いで売電価格は大幅に下がり、補助金はほとんどありません。
仕入れ先に思い切って載せてみてと頼んだそうで、ハウスメーカーも「発電所ですねー」と笑っていました。確かに、小さな発電所です。

発電所プランでの発電見込み量
年間発電量は推定13,315kWh。9月~1月は800~1,000kWh、2月~8月は1,000kWh~1300kWhと記載されています。
非オール電化住宅だと1カ月の消費電力量は400kWh前後。毎月2.7軒分の電力を賄える計算です。
オール電化住宅でも1.5軒分に相当する電力量。確かに発電所です。
発電所プランでの導入コスト
実際に見積もりに記載されていた導入費用です。
- 太陽光モジュール42枚:710万円
- パワコン2台:100万円
- その他諸々:95万円
- 合計905万円
※その他費用の大半は逆勾配用架台の費用です。価格は全て定価・税別です。
価格は全て定価ベースでここから値引きがあります。V2H機器も含めた見積もりで太陽光だけの値引率がわかりませんが、全体ではざっくり半値です。
検討した結果、やり過ぎと結論
家が発電所というのはさすがにやり過ぎ。
電気代で回収できれば考えますが、買取制度の変更により10kWを超える積載量では売電による回収は困難です。
10kWを超えると発電量の70%までが買取上限になり、売電期間は20年に伸びる代わりに価格は10kW未満より安くなります。
工場など消費電力が多い場合は自家消費でメリットが出ますが、家庭だと「オール電化+EV車で年3万km」ぐらいの消費が必要。
災害時電力の確保を主目的とする我が家には過剰な設備投資。現実的なプランをお願いしました。
現実的にはこれぐらい、積載量5.11kW
ここからは現実的なプランです。割高な昼間電力を太陽光に置き換える事で、購入電力を減らしコストメリットを出していきます。
さらに、災害時の停電でも十分な電力供給が期待できます。

現実的プランの発電見込み量
年間推定発電量は6,000kWh。9月~2月は350kWh~500kWh、3月~8月は500kWh~650kWhを発電できるそうです。
太陽光の買取価格は深夜電気並みに下がっているので、年間消費電力(7000kWh)をどれだけ自家消費で賄えるかがコスト回収の鍵。
エコキュート・冷房・床暖房・食洗機・洗濯乾燥機で電気代の6割を占めるので、これらを昼に動かせば発電量の8割は自家消費できそうです。
売電が期待できない今、消費電力量と発電量、消費時間帯と発電時間帯のバランスが重要なポイントです。
現実的プランの導入コスト
現実的な積載量での見積もり価格です。先ほどと同じくその他費用の大半は架台、全て定価・税別です。
- 太陽光モジュール18枚:304万円
- パワコン1台:52万円
- その他費用:48万円
- 合計:404万円
ここに値引きが入って約半値になります。それでも、昼の電気を太陽光で賄い余剰電力は売電して10年で償還できるかどうか。悩ましいところです。
回収期間を短くするには、電気以外のエネルギーを電気に置き換え、支出を減らしながら太陽光の消費を増やす必要があります。(例:ガソリン車→EV車)
要否検討と結果
発電所案に比べればかなり現実的な値段になりました。
しかし、2020年の売電価格(21円/kWh)で全量を売っても10年で130万円程度。やはり架台コストが重くのしかかります。
災害時に活躍しそうですが、蓄電池がなければ日中以外は使えない事が課題。肝心の蓄電池は値段が高く、深夜電気の活用差額だけでは回収できません。
やはり、費用回収・災害対応ではEVを活用したV2Hが主役になりそうですが、残念ながら期待のEVは新築に間に合わず。
太陽光・V2Hの導入は先送りし、必要な配線経路・設備設置スペースを確保するに留めました。
EV・V2H設備・補助金の拡充を睨みながら、入居後に必要な設備を順次導入することになります。
まとめ
「太陽光」「屋根」「広さ」と検索すると多くの記事が見つかりますが、想定する屋根の条件が異なるなど記載情報には幅があります。
実際に存在する家の話なので参考になればと思います。
今回の記事のまとめ
- 北下がり片流れ屋根への太陽光では「架台」が必要
- 「架台」は積載量減、重心・重量増、コストUPとデメリットが多い
- 架台込みだと太陽光単体で費用回収はかなり厳しい
- 屋根の形・向きで架台要否が決まるので新築時は注意
- 今後はEVと組み合わせてエネルギー全体での回収が必要
実際に導入しました。合計5.6kWhの太陽光で傾斜架台でパネル勾配を取り直してます。詳しくはこちらの記事でどうぞ。
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