どの建築会社と話をしても平屋の建築コストは、2階建の2〜3割増しと言われます。説明を聞けば理解できる理由でした。実際に平屋を建てて、確かに建築費は高かったと感じます。
一方で、自分達の「平屋だから」という思い入れやこだわりが、さらなるコスト増を招いたとも感じています。今回は、平屋が高くつく理由と、高くなってしまう施主の思い入れ・こだわりについて、我が家のケースを踏まえて説明します。
仕方ないと思える平屋建築費が高い理由

まずは、平屋という建築物の特徴から、どうしても建築費が高くなってしまう理由です。
基礎が大きくなる
同じ30坪の基礎でも、総2階建てだと15坪の基礎で済みます。一方で平屋は30坪分の基礎が必要なので、基礎面積が大きくなります。基礎工事は、根切り、型枠、配筋、生コンと全て現場施工で行われる作業です。このため、施工面積の大小がそのままコストに反映されます。
我が家の40坪は職人3人がかりで作業していました。作業を手伝った(本人談)妻によると、生コン業者・職人から「終わらねーぞ」と怒号が飛んでいたそうです。
屋根が大きくなる
基礎と同じ理由で屋根も大きくなります。屋根組、防水シート、断熱材、屋根材と、こちらも現場施工の作業が大きく増えます。
現場に行った日にたまたま防水シートを貼っていました。作業終わりに飲み物を差し入れた時、「この広さは本当に久々だよー」と。施工しごたえがあったと理解しています。
その後の屋根材施工は天候不良が続き遅々として進みません。職人さんも現場を掛け持ちしていますので、大きな屋根はスケジュールの融通が効きにくいのもデメリットです。
給排水設備も大きくなる
建物の面積が広くなるため水回りも分散しがちです。最近は玄関に手洗いを設置する事も多く、キッチンから遠く離れた玄関まで給排水管が必要になります。
水回りはまとめる方が配管コストが安くなります。排水が分散すると、本管に接続する建物まわりの排水管も複雑になります。建物面積が広くなる平屋では注意が必要です。
土地改良も広くなる
地盤改良不要と聞いた時の安堵感は今でも忘れられません。請負契約時点では正確な金額が分からないので、施主にとっては本当に不安な費用項目です。
建築面積の広くなる平屋は地盤改良の範囲も広くなります。同じ延べ床面積の総2階と比べると、改良範囲は2倍になります。単価 x ㎡と計算はドライ、ドキドキします。
固定資産税も高くなる
固定資産税は評価点数表から建物仕様に従って数字を積み上げていきます。屋根や基礎は評価点数が高く、屋根基礎が大きくなる平屋は固定資産評価額が高くなりがち。
柱・壁体という項目に階数による増減補正があり、2階建て以下は±0、3階建は1割増しと平屋でも減点補正はありません。違いは、2階床組が1階床組より割高に設定にされているぐらいです。
その他、大きな軒の出や高天井、天窓など平屋で採用したい仕様は、軒並み割増評価となっています。固定資産税が割高になる理由です。
【番外編】平屋希望の施主は高くても買う?
ハウスメーカーのカタログや広告を見ていると、平屋のキャッチフレーズには「プレミアム」という言葉をよく見かけます。
平屋希望というと俄然前のめりになる事も。某〇〇林業の方は、「平屋といえばウチですよ」と言い切ってました。(2階建て以上はウチじゃないのか?)
2階建てに比べると建築数が絶対的に少なく開発費を按分すると高くなるのは分かります。多少高くても平屋が欲しい施主なので、原価以上に高い価格設定になっていると感じます。
この点は相見積もりで対抗できるので、しっかりと対抗馬を立てるべきです。平屋の展示場はないので、展示場費用は多少は安くして欲しいと言ってみるのも手かも。
柔軟に設計できる平屋ならではのコスト増

平屋を希望する施主は建築会社にとってどう映っているのでしょうか?こだわりやイメージを強く持っているから、多少のコストは織り込み済み?
深い軒の出・開放的な大窓など高い事はわかってますが、「せっかくの平屋」「一生に一度」という思いから見積もりを貰い、ハンコをついた事もあります。結果、高コストの平屋に輪をかけます。
平屋は底冷えしヒートショックも心配、全面床暖房
平屋の床下は全て基礎・地面のため家全体で底冷えするので、全面床暖房を薦められます。ヒートショック対策にもなります。施工面積が広くなると㎡単価は安くなり、値引きも大きくなり、心が揺れます。
ハンコつきました。寒いのが嫌な妻は導入決定と言い切ります。誰のためのヒートショック対策かと力説。こうなると営業は不要。ただ、結果としてヒートポンプが2機必要になりました。
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2階がない平屋ならでは、外とつながる大開口
平屋は2階の重量を支える必要がなく耐震性の高い建物。大きな大開口窓を設置しやすいので、屋外を室内に取り込むような空間デザインにも向いています。
しかし、大開口の大窓ではコストも大きくなります。中庭に面した3面に幅4m(方立含む)のフルハイト窓を設置しましたが全て特注。
キャンペーンで大幅な値引きはありましたが、定価では1面あたり100万円です。カーテンやブラインドを設置する場合、全て特注品になるので建築以外にも注意が必要です。
ワンフロアだから屋根を活かせる、高天井・勾配天井
2階がないメリットはもう1つ。居住空間のすぐ上が屋根なので、屋根形状を活かした3mを超える高天井や勾配屋根を実現しやすいのもワンフロアの平屋ならでは。
しかし、この高天井や勾配天井も坪当たり数万円かかります。20畳のLDKを勾配天井にする場合、数十万円の追加費用です。天井面積・屋内壁面積が増え材料費も追加。
天井・壁材もこだわると材料単価、高窓・シーリングファン・照明と追加コストが連鎖します。我が家はこの総予算を捻出できず。天井材だけはこだわりチーク挽板貼りにし天井高は標準です。
大屋根の軒下でアクティブ・ゆったり、深い軒の出
平屋と聞くと大屋根に深い軒をイメージする事もあります。軒下のポーチに屋外家具を並べて寛いだり、人が集まってアクティブにBBQなど、カタログや建築実例を見ていると夢が広がります。
外壁面から0.9mを超える軒の出は建ぺい率に含まれるので、その分広い土地が必要です。構造柱が増え、屋根材も追加、固定資産税も増えます。結構お金がかかります。
目線を避け陽当たりを確保できる、中庭
外部の目線と生活空間の高さが近いので窓を開けづらく、また、屋根が大きく奥まで光が届きにくいのがデメリット。中庭や天窓を設置して採光不足を補います。
口の字の場合、水の逃げ場がなく排水設備に追加コストが必要です。コの字やL字は有利です。また、中庭の植栽・タイル(ウッド)デッキ・照明・給水と、中庭も付帯コストの連鎖。
屋根・軒がなければ建ぺい率には影響しませんが、建物の外周面積は大きくなるので、隣地境界規制、斜線規制、緑化面積規制には注意が必要です。抵触する場合、より広い土地が必要です。
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デッドスペースを活用できる、ロフト
屋根が大きな平屋は小屋裏のデッドスペースも大きく、ロフトを設置しやすい建物。さらに動線を短く設計できる分、収納が不足しがちで平屋のロフト需要は大きいと思います。
ただし、ロフトにも壁・床・天井代はかかります。固定階段まで設置すると、建築費の面では2階建てと同じ。こだわる要素がなく全て標準仕様と割り切り易い2階、という程度です。
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最後に

2階建て以上が一般的な日本では、平屋はむしろ高級品です。振り返ってみると、売る側の理由や建築上の理由以上に、施主の強いこだわりがコスト高につながっている事もあります。
間取り・構造の変更がしやすいので大掛かりなオプションも多くなり、結果として、内装材やインテリアまでコストが連鎖的に増加するので、総額を意識した設計検討が必要です。
イメージする平屋を一旦外して、フラットな気持ちで考え直すことも重要。希望仕様のどこに魅力を感じているのか、この点を深掘りし設計者に説明できるのは、施主しかいません。
しっかり悩んでそれでも欲しいと思ったら、それはGO。採用しないと後悔します。一方、費用の問題は残るので買い方が重要。平屋はリスクが低いので、2階建同等の技術・保証・仕組は本来不要です。
次回は、「納得いく価格で平屋を建てるために、我が家が行った建築会社選び」について書きたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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