我が家の北欧家具紹介4回目は、下駄箱として使用している「ボーエ・モーエンセン」のキャビネットを紹介します。
北欧家具4大巨匠の1人に数えられる「ボーエ・モーエンセン」ですが、シンプルで長く使える頑丈さを備え、さらに、購入しやすい価格帯を目指した「庶民のデザイナー」と紹介されます。
着工合意直前で下駄箱難民になった我が家。苦境を救ってくれたのは、その巨匠がデザインしたキャビネット。下駄箱にするには申し訳ないですが、要件を満たすものが他に見つかりませんでした。
まずは、このキャビネットを選ぶに至ったストーリーから紹介します。
前回までの北欧家具紹介記事はこちらからどうぞ。
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完全にノーマークで下駄箱難民に
新築見積もりで設定されていた下駄箱に違和感を感じたのは、着工合意の3週間前。翌週には最終仕様・価格の読み合わせを控えたタイミングです。
早い段階で仕様確定した玄関
玄関にはこだわりが無かったので、間取り確定と同時に、玄関の設備仕様は大枠固まっていました。
その後、ビンテージ照明(エドワルド・ハルド作)の設置を決め、それに見合うように天井高やクロス仕上げを変更しました。照明付近の仕様ばかり気にしていて、下駄箱の確認が漏れていました。
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設定されていた下駄箱
着工合意直前で設定されていたのは「クリフ フルトール収納(GSFB-1223)」で、屋内扉で採用している神谷コーポレーションの製品。問題は面材です。
クリフの面材はオレフィンシートで、化粧板の中では比較的安価な仕様です。クリフ自体は良い製品ですが、こだわった主役級の照明器具の下にオレフィンシートでは役不足と考えました。
緊急会議実施で下駄箱レスに決定
建築のスケジュールもあるので、建築士・建築会社・ICと緊急会議を実施。話の要点としては、
- 設備メーカーの量産グレードではなく、家具メーカーのオーダー品が良い
- ジューテックホームで提案できる代案は「FILEのオーダー品」
- それでも、仕様を確定する時間がないので、一旦下駄箱は建築見積もりから外す
- 量産グレードを外す時点で、施主支給の方がメリットは大きい
早くに気づいていても結果は同じだったと思います。着工合意目前での変更は不安もありましたが下駄箱は施主手配にしました。引き渡しまで8ヶ月、下駄箱探しが始まります。
下駄箱としての条件
我が家の玄関で、下駄箱として使うための条件をまとめました。
- 奥行き37cm以下:神谷クリフの奥行きで玄関扉の位置が確定済み。これは必須条件。
- 引き違い扉:開戸は開閉スペースが必要。実用性では引き違いがベスト。
- 収納力:SICが隣にあるので日常的に使う30足収納できれば十分。
- 予算:住宅ローンが使えないので30万円までが限界。
- デザイン:適度な存在感がある樹種、特に木目がはっきりしているものを希望。
建築見積もりでは10万円前後の予算でしたが、給付金を充当し30万円まで予算を引き上げました。しかし、オーダー品の価格には届かず。ビンテージ家具に希望を託します。
宣言解除直後に滑り込み
この条件で販売店を当たりましたが、奥行き37cmの条件が厳しく、見つかってもサイズが小さく収納力が足りません。諦めかけていた頃、六本木KAMADAに入荷したのがこのキャビネットです。
サイズ・収納力・予算・デザインは希望通りですが、引き違い扉でなく観音開きの開戸です。
その頃、日本は1回目の緊急事態宣言の最中。外出自粛により実物確認もままなりません。一方、販売店は現地での買い付けができない状況。これを逃すと、その後の新規入荷がどうなるか分かりません。
希望と異なる扉ですが、購入を決めて現物確認を行いました。ビンテージ品は出会いです。
ボーエ・モーエンセンのキャビネット

ここからは、ボーエ・モーエンセンというデザイナー、購入したキャビネットについて紹介します。
ボーエ・モーエンセンというのデザイナー
1938年から王立アカデミーで学ぶ一方、コーア・クリントやモーエンス・コッホのデザイン事務所で勤務し、デザイン手法や思想面で大きな影響を受けたそうです。
1942年にアカデミーを卒業した後、FDBモブラーの初代家具開発チーフとして従事し、北欧インテリアの代名詞とも言えるシンプルで洗練された家具をデザインします。
1959年に自身のデザイン会社を立ち上げ、SoborgやFredericiaへのデザイン提供を行います。この頃に生まれた名作の1つがスパニッシュチェア。我が家でもいつか欲しいと考えている椅子です。
欧米での展示会も積極的に行い、デザイン賞も多く受賞。デンマークのモダン家具を世界に広めた巨匠です。1972年、58歳の若さで亡くなります。
庶民のデザイナーと紹介される北欧の巨匠
FDBモブラーからの「庶民の為の家具を」という要請を受け、家具開発のチーフを引き受けます。モダンな家具に興味を持たない層も巻き込む、人気家具となったそうです。
その頃デザインされたのがJ-39チェア。シンプルなデザインとペーパーコードの座面で、特別な家具の知識がなくても組み立てられるため、当時のデンマークの雇用にも貢献したとされます。
もう1人の巨匠ウェグナーとの親交が深く、低価格家具の展示会に共同出品しています。ウェグナーも入手しやすいオーク材で量産しやすい家具をデザイン。親交が深いのもうなづけます。
デザインの特徴はシンプル・頑丈
デザインは、直線的で装飾を排除したシンプルなもの。長く使える頑丈さに強いこだわりを感じます。ボルト1本までこだわったケアホルムとは、同じ直線的でシンプルな家具でも考え方が異なります。
それでも、両名ともクリントの流れを汲むデザイナーです。リ・デザインという手法は共通します。先ほどのスパニッシュチェアも、スペインの伝統様式をモーエンセンの解釈でデザインしたとされます。
このキャビネットの特徴
キャビネットの寸法詳細
外寸法は 幅100cm 高さ148cm(脚部30cm含む)奥行き35cm。箱枠の板厚が2cmあるので、収納部の内寸法では、幅96cm 高さ114cm 奥行き30cmです。
棚板(2cm厚)7枚で仕切りれば、スニーカーで40足超の収納力です。実際は、女性用ヒールやブーツもあるので、6段で仕切り30足程度を収納しています。

内寸奥行きが30cmなので、男性用の革靴は少し傾けて収納する必要があります。あと、2cm奥行きがあれば完璧でした。
面材・脚材

収納部の突板はチークで、天板・前面扉のはっきりとした木目が存在感を発揮。扉の内面にも丁寧にチークが貼られており、開いた時にも優雅な木目が楽しめます。

脚部は実用性の高いオーク材を使用し、緩くカーブした幕板はシンプルな直線構成の中、数少ない曲線装飾です。汚れやすい床と接する脚先端は濃色で塗り分けられ、汚れが目立ちにくくなります。
開閉扉の方式
扉は左右に開く観音開き。スペースが限られる玄関は、開閉スペース小さい引き違いや折戸が便利ですが、観音開きも全体を見渡しやすく、扉背後にデッドスペースができない点ではメリットがあります。

扉には取っ手が2つありますが、シンプルで主張はなく手をかけられる程度。このシリーズのキャビネットは皆このタイプの取手です。
これは彼の家具全般に共通する特徴のようです。取っ手が無く、鍵を使って開閉するサイドボードもありました。
壁面への固定
奥行き35cmと薄いため、扉を開いた状態だと扉側に倒れやすく不安定です。事前に壁面補強を入れておき、背板に5mmの杉板を当てて木ネジで固定しています。
タイル敷きの玄関は水勾配(3%ぐらい)がついています。傾斜方向と開閉方向が同じ我が家の場合、扉を開いた途端キャビネットごと倒れてきます。壁固定は必須です。
以前のオーナーも同じようで、背板にはパテで修理されたネジ穴跡が2つありました。パテを外して同じ穴を再利用しています。
掃除の時に気を遣う
玄関タイルだと水を流して掃除することが多いので、木製家具の下駄箱は気を使います。脚回りはブラシで汚れを掃き出して、水ハネに注意しながら流します。
思い切って脚を取り外して、浮かせた状態で壁面に固定する方法もあります。脚自体がなくなるので格段に掃除しやすくなります。おいおい考えようとおもます。
工房・販売店について
ボーエ・モーエンセンの家具と聞くと、スパニッシュチェアのFredericiaのイメージが強いですが、こちらは1890年に創業した ソボー・モブラー社製のキャビネット。ビンテージ品です。
モーエンセン以外にも、ピーター・ビットやカイ・クリスチャンセンの家具も製作します。
販売店は六本木にショールームを構えるKAMADA。大きなマンションの緑豊かな中庭を通った先にある戸建離れです。伺う際は事前に予約が必要です。
ケアホルムやフィンユール、ウェグナーを始め、有名なデザイナー家具が並びます。我が家はフィンユール家具を探す中で見つけました。
YouTubeに買付時の動画も上がっています。現地の風景や買付に回る姿が見られて新鮮です。
最後に
下駄箱難民になった我が家を救ったキャビネットについて記載しました。
オーダー家具はお金を出せば買えますが、出会わなければ買う事もできないのがビンテージ品です。そもそもはチェック漏れが原因でドタバタしましたが、結果、良い出会いにつながりました。
その後も、ビンテージショップのHPを見ていますが、このキャビネットは比較的入手しやすいようです。購入から1年半経ちますが数回販売されているのを見かけました。
最後まで読んで頂きありがとうございます。次回は、ポール・ケアホルム「PK22」を紹介します。
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