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照明

北欧照明の代名詞「ルイス・ポールセンPH」の歴史とビンテージPH

2021年6月25日

ルイスポールセンPHランプ

ルイスポールセン「PHランプ」といえば、インテリア雑誌だけでなく、テレビドラマでも頻繁に見かける北欧を代表する照明です。大小異なる皿のようなシェードが連なる独特のデザインに、赤や青、緑といったカラフルな色が華を添えます。

この独特のシェードにはデザイナー「ポール・ヘニングセン」の照明に対する思いが詰まっています。今回の記事では、デザイナー「ポール・ヘニングセン」の照明に対する考えに触れながら、PHランプの歴史、我が家にあるPHランプ(PH2)について紹介します。

目次(ジャンプできます)

    近代照明の父「ポール・ヘニングセン」

    スマホやモニター用のフィルターにアンチグレアという仕様があります。「グレア」とは、「ものを見えづらくしたり、不快感を感じさせるギラツキ感・眩しさのこと」をいいます。ポール・ヘニングセンは、電球照明のグレアと向き合い続けたデザイナーで、近代照明の父と呼ばれます。

    幼い頃の心象風景

    ポール・ヘニングセンがデンマークで生まれたのは1984年。この頃の照明といえばガス灯で、彼も揺れる炎に柔らかく照らされる空間で少年期まで過ごしたそうです。その後、電気の普及に伴いガス灯は電気照明に変わっていきます。

    しかし、当時の電気照明はシェードもなく剥き出しの電球がギラギラと室内を照らします。「昔のガス灯のような柔らかい光を作りたい。」少年期に感じたこの思いが、ポール・ヘニングセンが生涯照明デザインと向き合いつづけた原動力とされます。

    かたちづくられた本物の照明

    • 「いったん本物の照明を経験したら、生活は新たな価値で満ちあふれる」(ポール・ヘニングセン)
    • 「光をかたちづくる(Design to Shape Light)」(ルイス・ポールセン)

    PHランプの最大の特徴は、「必要な所は明るいのに、目には眩しくない」ということ。シェードの形や角度、素材を緻密に計算することで、光を届ける方向や距離を自在に操ります。まさに「光をかたちづくる」「本物の照明」です。

    PHランプの歴史

    PHランプの歴史は、その独特のシェードの形・枚数の変遷そのものです。まとめてみました。

    • Slotsholm Lamp(街灯・1920年)

      ヘニングセンは1917年に大学を退学、1919年に自身のデザインオフィスを立ち上げます。翌1920年、彼がデザインした街灯「Slotsholm Lamp」がコペンハーゲンの運河沿いに設置されます。「支柱高さの7倍の距離まで光を届けた」とされる電気の街灯です。

      図面を見ると電球を中心に光の拡散を緻密に計算している事がわかります。しかし、認識の違いなのか、製造会社により部品が1つ外されたそうで、最終的には「眩しい(グレア)」事を理由に全て撤去されてしまったそうです。

      (写真はwikipedia 英語版「poul henningsen」の項目にあります。)

      ※2018年には、この街灯を Christiansborg Palaceの運河沿いに復刻させようという動きもあったそうです。

    • PHランプの原型(Paris Lamp・1925年)

      PHランプが初めて世界に知られたのは1925年のパリ万博。デンマークパビリオンに「System PH」として展示された3つの照明の1つ「Paris Lamp」でヘニングセンは金賞を受賞、製造したルイス・ポールセンは銀賞を受賞します。

      このParis Lampは6枚のシェードで構成され、トップからボトムに向かって、直径は小さく、曲線は強く、角度は垂直に近づきます。ボトム2枚のシェードはPH5とほぼ同じ形で、この頃にはPH5につながる構造が出来ていた事がうかがえます。

      (写真はwikipedia 英語版「poul henningsen」の項目にあります。)

    • 4:2:1の3シェード(Forum Lamp・1926年)

      万博での金賞受賞の翌年、ルイスポールセンと共同でコペンハーゲンに新築される展示場のライティングを受注します。自動車の展示を想定した広い空間で、そのためにデザインされた照明が「Forum Lamp」です。

      Forum Lampは3枚のシェードを使い、「横方向2:中間1:真下方向1」に電球の光を分割し放射します。これを実現するため、シェードサイズはトップから4:2:1と順番に小さくなり、角度も垂直に近づきます。これが3枚シェードで光の方向を調整する「3シェードシステム」の始まりです。

      ※シェード自体は3枚ですが、電球の直下にはグレアを防ぐための部品が設置されます。後にボトムボウルとして、ボトムシェード下部に設置されます。

    • 3:2:1の3シェード(1926年以降)

      Forum Lampでの成功を背景に3シェードを家庭用として発売。展示場より遥かに小さな空間なので横方向への光を抑え下方向に集めます。トップシェードを一回り小さくし、比率を「3:2:1」に変更。さらに、電球の位置を少し下げて下方向により多くの光が届くように調整してます。

      この「3:2:1」を基本形とし、食卓での2灯・3灯使い、ローテーブル上の1灯使いなど、使用環境に合わせて拡散方向を変えるため、シェードの比率を調整します。これが、PHランプの呼び名に表れています。

      • PH3は直径30cmの3番トップシェードに「3:2:1」の比率でミドル・ボトムシェードを取り付けたもの
      • PH3/2は、3番トップシェードに、2番トップシェードのミドル・ボトムシェードを取り付けたもの
      • PH3 1/2-3は、3番と4番の間にあたる3 1/2番シェード(=35cm)に、3番シェードのミドル・ボトムシェードを取り付けたもの
    phランプ

    lampenlee (Lothar Lee), CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons

    PHランプ

    Camiove, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

     

    最も有名なPH5

    その後、1958年にPH5を発表します。テレビ・雑誌でも見かける事が多く一番有名なPHランプだと思います。その特徴は、

    1. 名前の由来となる直径50cmのトップシェード
    2. 合計6枚のシェードを使ったグレアフリーデザイン
    3. シェードの曲線には自然界に存在する対数螺旋を用いている
    4. 目に優しい光にするため赤と青の小さなシェードを補った

    そして、「Paris Lampで使った下2枚とトップシェード上のシェード」「3シェードの構成理論」を組み合わせた全部乗せ仕様です。その意味では、1925年から30年超を経て完成した、PHランプの集大成です。

    PH5 ルイスポールセン

    "File:PH-Lampan 1.jpg" by Holger.Ellgaard is marked with CC BY-SA 3.0. To view the terms, visit https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/?ref=openverse

    最高峰はアーティチョーク

    他方、PHランプの最高峰といえば、PH5と同じ1958年にデザインされた「アーティチョーク」。72枚の羽を含めて大部分は、いまだに手作業だそうです。値段も最高峰ですが、その佇まいには息を呑みます。照明一つで空間を作り上げられる最高峰の芸術品です。

    実際にアーティチョークの周りを回って確認しますが、どの角度からみても電球が見えません。電球の光は必ず羽に反射して意図された方向に拡散します。72枚もある羽根の位置・角度は細かく計算され正確に配置されています。

    2020年に復刻されたセプティマというモデルがあり、アーティチョークの元デザインとされます。セプティマはPHらしい形ですが、ガラスシェードを部分的に磨りガラスにして光の拡散・透過を調整しています。この磨りガラスの形がアーティチョークの羽の形によく似ています。

    PH アーティチョーク

    "April 05, 2009-12.12.15" by gcbb is marked with CC BY 2.0. To view the terms, visit https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/?ref=openverse

    次のページでは我が家のビンテージPHランプ、購入店」を紹介します。

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