Wi-Fi電波が弱い問題#2 イーサネットバックホールとDecoX20で解決
- 2022年1月23日
- 2023年9月24日

「中央に大きな中庭がある平屋」という特殊な間取りで、家全体にWi-Fiを張り巡らすために、バッファローのWTR-M2133HSによるメッシュWi-Fiを選びました。
家中なんとか使える状態にはなりましたが、ランドリーや寝室の電波が極端に弱い状態。ロフトに上がる階段に中継機を置いているので、登り降りで危ないと感じる事もあります。
そんなWi-Fi事情の中で最大の問題は、親機と中継機の通信状態です。設置場所の都合もあり、親子の通信でかなりのエラーが発生しています。一連の問題を解決するために「イーサネットバックホール」を活用します。
目次(クリックで開閉)
イーサネットバックホールとは?
耳慣れない言葉ですが、メッシュWi-Fiの親子機間を有線LANで通信する仕組みです。最近は日系メーカーでも採用され始めましたが、TP-Linkやネットギアなど海外勢では早くから取り入れている仕組みです。
親機と子機の繋ぎ方メッシュWi-Fi:親機と中継機が一体的な無線エリアを作るので、親機・中継機のエリアを越える時も再接続は不要です。途中で通信が途切れないので、動画も途切れる事なく移動できます。
イーサネットバックホール:親機と中継機の通信を有線LANにする仕組み。我が家のように無線通信が不安定な状況でも、エラーが少なく効率よく本来の速度で通信する事ができます。
最近はテレビや家電もWi-Fiに繋がるので無線ネットワークは混雑しています。通信が集約する基幹回線が有線に固定されるので、混雑回避のバンド切り替えなどが減り通信が途切れにくくなります。
ただし、このバックホールを活用するためには、対応するルーター(親機・子機)を使う事と、基幹回線になる有線LAN網が必要です。我が家は有線網がないので、まずはこの点から始めます。
有線LANの配線工事(DIY)
ハウスメーカーから有線配線の要否を聞かれた時、「無線で大丈夫」と自信満々で答えました。後悔しながら図面を確認すると、良い配管が見つかりました。光コンセントから客間に繋がるテレビアンテナ配線です。
用意した資材と機器
この配線工事で使用した資材と機器の一覧です。全てAmazonで購入しました。
資材・機材 | メーカー | 数量 | 税別小計 |
---|---|---|---|
CAT6 イーサネットケーブル | バッファロー | 30m | ¥1,780 |
ぐっとす情報モジュラジャック | パナソニック | 2個 | ¥2,278 |
LANケーブルテスター | サンワサプライ | 1個 | ¥789 |



DIYでのLANケーブル設置
まずはアンテナ線とLANケーブルを入れ替え、モジュラージャックを取り付けます。その時の手順は、次の通りです。
- パネル・取付プレート・TVコンセントを外し、アンテナ線を外す(LDK・客間)
- LANケーブル片側のソケットを切り落とし、アンテナ線にビニルテープでしっかり固定(LDK)
- 反対側からアンテナケーブルを引き抜き、LANケーブルを引っ張り出す(客間)
- 引き出したLANケーブルにモジュラジャックを取り付ける(客間)
- LANケーブルテスターでジャック取り付け状態を確認
- LDK側の余分なLANケーブル・ソケットを切断し、モジュラジャックを取り付け(LDK)
- テスターでLDKのジャック取り付けを確認し、取付プレート・パネルを戻す(LDK・客間)
ジャックの取り付けやケーブル長に不安があったので、ジャックの取り付けは片側ずつ作業しました。両方ジャックを取り付けた後にテスターでNGがでると、どちらのジャックがNGなのかわかりません。
片側にオリジナルのソケットが残っていれば、取り付けたジャックの問題だとわかります。沼にハマらないための手順です。
LANケーブルにモジュラージャックを取り付ける部分が少し手間ですが、特別な道具や技術は必要ありません。説明書よりネット記事が参考になります。基本的には色指定に従って押し込むだけです。
TP-LINK Deco X20の導入
今回、ネットワーク改善に向けて選んだのは、TP-LINK社のDECO X20です。新築時にも検討を考えた機種ですが、IPv6に対応していない為見送った機種です。
全体のシステム構成

全体のシステム構成は上の図の通りです。我が家はDocomoのフェムトセル(注)が入っているので、ONU下のハブを設置しています。
- ハブで分岐しルーターへ有線で接続
- ルーターから1台目のX20に有線で接続
- 先ほど設置したモジュラジャックに有線で接続
- (アンテナ線と入れ替えた)壁内有線を経由
- 客間のモジュラジャックから2台目のX20に接続
2台のX20がそれぞれにWi-Fi電波を発信しますが、メッシュWi-Fi対応なのでSSID・パスワードは同じものです。有線で繋がる2台のカバーエリアを1つのエリアとして使用でき、エリアを跨ぐときも接続は切れません。
IPv6(v6プラス)への対応
先ほどのシステム構成で、X20をルーター下に配置しました。X20自体にルーター機能はありますが、IPv6(v6プラス)に対応しておらず、v6プラス環境ではルーターとして使う事はできません。
契約プロバイダー(GMOとくとくBB)では、v6プラスに対応したルーターを無償で借りる事ができます。3種類から選べますが、我が家はNECのAterm WG2600HS2を選びました。
Atermをルーターとして設置し無線機能をOFF、その下にX20を配置しブリッジモード(ルーター機能OFF)にします。こうする事でDeco X20に足りないIPv6ルーター機能を補うことができます。
設置手順
我が家は既にv6プラスを開設済みだったので、既設のルーター(WTR-M2133HS/E2S)を取り外し、借りたルーターとX20を設置するだけ。基本的にはX20のアプリに従うだけで設置できます。
- 既設ルーター・子機を取り外し、ONU・フェムトセル・ハブの電源をOFF
- Atermをハブ下に接続し、ONU・ハブ・フェムトセル・Atermの順に電源ON
- AtermのWi-Fiを使いIPv6での通信を確認し、1台目のX20を接続しアプリに従う
- X20のWi-Fiを使い管理画面からX20をブリッジモードに変更。X20でのIPv6通信を確認
- X20のWi-FiからAtermの管理画面に入り、AtermのWi-Fiを全てOFF
- 2台目のX20を設置・起動後、ネット接続・IPv6接続を確認して完了
X20本体にはモード(ルーター・ブリッジ)を切り替えるスイッチはないので、手順3までの接続を確認した上でブリッジモードに切り替えます。ブリッジにするまではX20のWi-FiでIPv6通信はできませんでした。
不要なWi-Fi必ずしもAtermの無線を停止する必要はありません。我が家の場合、フェムトセルが電波干渉で出力抑制しないように、念の為不要な無線は停止してます。セキュリティ面でも使わない無線は切っておく方が良いと思います。
イーサネットバックホール+メッシュWi-Fiの効果
イーサネットバックホール(有線LAN)とメッシュWi-Fiを併用した結果、我が家のWi-Fi電波弱い問題の改善状況を紹介します。
前回記事と同じくAirMacアプリを使用しており、青は電波良好、黄は弱め、赤は悪いとして記載しました。単位dBmは電波強度の単位。減衰はー(マイナス)表記で0に近いほど強くなります。

1台目のX20設置時点での電波強度
WTR-M2133の親機のみ(最左列)では赤のエリアが多く通信はほぼできません。X20(1機)に変更しただけ(最右列)で青色・黄色のエリアが増えています。X20の方が1台あたりのカバーエリアは広いようです。(赤:不可・黄:弱い・青:良好)
計測場所 | WTR-M2133 親機のみ | WTR-M2133 + 中継2機 | DECO X20(1機) |
① | -42dBm/-53dBm | -42dBm/-53dBm | -33dBm/-40dBm |
② | -51dBm/-56dBm | -51dBm/-56dBm | -48dBm/-50dBm |
③ | -47dBm/-54dBm | -47dBm/-54dBm | -52dBm/-51dBm |
④ | -64dBm/-68dBm | -64dBm/-68dBm | -49dBm/-59dBm |
⑤ | -81dBm/-84dBm | -54dBm/-62dBm | -67dBm/-73dBm |
⑥ | -81dBm/-91dBm | -56dBm/-62dBm | -75dBm/-84dBm |
⑦ | -82dBm/-93dBm | -72dBm/-72dBm | -72dBm/-85dBm |
⑧ | -90dBm/-91dBm | -69dBm/-71dBm | -79dBm/-81dBm |
⑨ | -77dBm/-80dBm | -58dBm/-72dBm | -65dBm/-67dBm |
⑩ | -79dBm/-89dBm | -66dBm/-73dBm | -70dBm/-85dBm |
重要な事は、WTR-M2133 親機のみでは④の電波強度が黄色であること。ここが1つ目の中継機設置場所なので、この電波強度の弱さが親・中継機間の通信エラーに直結しています。
中央列を見ると、中継機2機を2機設置することで、⑤-⑨までの電波状況は改善しています。しかし、先ほどの④の電波強度が弱い事から、親機・中継機間で大きな通信ロスが起きデータ再送による遅延が発生していると考えています。
2台目のX20設置時点での電波強度
さらにX20をもう1機追加した結果(右列)です。赤のエリアが完全になくなり、最も悪い場所でも黄色まで改善。電波強度だけを見ても大幅な改善で、DecoX20のカバーエリアの広さを示すものです。
計測場所 | WTR-M2133 + 中継2機 | DECO X20(1機) | DECO X20(2機) |
① | -42dBm/-53dBm | -33dBm/-40dBm | -33dBm/-40dBm |
② | -51dBm/-56dBm | -48dBm/-50dBm | -48dBm/-50dBm |
③ | -47dBm/-54dBm | -52dBm/-51dBm | -52dBm/-51dBm |
④ | -64dBm/-68dBm | -49dBm/-59dBm | -49dBm/-59dBm |
⑤ | -54dBm/-62dBm | -67dBm/-73dBm | -40dBm/-46dBm |
⑥ | -56dBm/-62dBm | -75dBm/-84dBm | -50dBm/-54dBm |
⑦ | -72dBm/-72dBm | -72dBm/-85dBm | -59dBm/-61dBm |
⑧ | -69dBm/-71dBm | -79dBm/-81dBm | -61dBm/-65dBm |
⑨ | -58dBm/-72dBm | -65dBm/-67dBm | -57dBm/-70dBm |
⑩ | -66dBm/-73dBm | -70dBm/-85dBm | -61dBm/-66dBm |
X20の2機が有線LANで繋がれている事がとても重要。WTR-M2133+中継機(左列)と異なり2機間が物理回線でつながっているため、右列のWi-Fi強度の強さがそのままエリア全体の通信速度に反映されます。
電波が弱かった主寝室・WIC・ランドリーの状況
プライベートビエラの映像が途切れてまともに視聴できなかった主寝室ですが、問題なくテレビを見られるようになりました。大きな改善です。ランドリーや風呂でもストレスなくネット・テレビを使えます。
頻繁に途切れていたテレビ
プライベートビエラをキッチンで使っている時も、バンド切り替えにより頻繁に映像が停止していました。有線バックホールを導入してから、映像が止まることは一度もありません。
バンド切替仕様の違いもあると思いますが、周辺で使っているスマホやノートパソコンの状況は変わっておらず、有線導入により無線網全体の負荷が下りバンド切替の頻度が減ったと考えています。
Wi-Fiが弱い問題、まとめ
新築から1年かかりましたが、快適なネット環境を構築することができました。最近は無線通信が当たり前ですが、改めて有線の安定感を実感しました。
大きな中庭のある平屋という特殊な間取りの話ですが、無線・有線の良さを組み合わせる利点は、上下階方向に有線を設置すれば、2階建て・3階建てでも同様に効果のある方法です。
日系の無線機器メーカーでもメッシュWi-Fiやイーサネットバックホールといった仕組みを取り入れ始めています。生活を支えるインフラとしての重要度は増す一方なので、もっと選択肢が増えると良いと思います。
最後まで読んで頂き有難うございます。次回は、「フェムトセルの電波状況」を確認します。