電気代・ガソリン代が高騰する中、1年前倒しで太陽光・蓄電池・V2H・EVの導入を決めました。
V2Hは事実上ニチコン一択の状況で悩みませんが、V2Hに組み合わせる蓄電システムはニチコンだけでも複数種類あります。
最初は何が違うのか分かりませんでしたが、比較検討した結果、優れた充放電効率を理由に「トライブリッド蓄電システム」を選びました。
今回の記事では、「パワコンの数・変換効率」を切り口に「なぜトライブリッドを選んだか?」について紹介します。
この記事でわかる事
- パワコンの数と電気の変換ロス
- 蓄電システムごとの変換効率
- ニチコンの家庭向け製品の違い
- 新築時におすすめの導入設備
こんな方におすすめです
- V2H・太陽光・蓄電池の導入を考えている人
- 災害・電気代対策を考えている人
- 新築でどの設備にするか考えている人
目次(ジャンプできます)
パワコンは少ない方が良い
パワーコンディショナー、略してパワコンです。太陽光・蓄電池・V2H、それぞれで必須の設備ですが色々と問題があるのも事実。「パワコンは減らすべき」の理由を紹介します。
そもそもパワコンって何?
「直流ー交流を変換すること」が主な機能でインバーターとも呼ばれます。太陽光・蓄電池・V2H(EV)が直流に対し、発電所から送られてくる電気(系統電力)は交流です。
パワコンは、太陽光など直流機器と分電盤の境目に設置され、直流機器から分電盤に向かう電気を直流→交流に、分電盤から蓄電池・V2Hに向かう電気を交流→直流に変換する機器です。
その他、系統電力と機器を切断する機能(系統連系保護機能)や(太陽光の場合)発電効率を最大化する機能(最大電力点追従制御)もついています。
直流(DC)・交流(AC)とは?
直流(DC)はプラス側・マイナス側が決まっていて一定方向に電気が流れるのに対し、交流(AC)はプラス・マイナスや電気の流れが一定の周期で変化します。
家庭に届く系統電力は送電に適した交流ですが、直流の方が半導体とも組みやすく大半の家電はACアダプターや内蔵インバーターを使って交流を直流に変換しています。
最近人気のサーキュレーターでは交流・直流が選べますが、機能や電気代の違いにも直流・交流の違いが出ています。
変換ロスってどういう事?
パワコンやインバーター、ACアダプターで交流・直流を変換する時、電気の一部が熱に変わり放出されます。これが変換ロス。分かりやすいのはACアダプター。長時間使うとかなりの発熱です。
ACアダプターで20%前後のロス、ポータブルバッテリーでも10〜20%のロスがあります。バッテリーの場合は充電・放電と2回変換するので、効率90%でも往復で19%の電力を失うことになります。
電気を効率的に使うには「直流交流の変換は最小限」がポイントです。
パワコンが少なければロスは少ない
電気代削減のため蓄電池やV2Hを導入する人も多いと思いますが、経由するパワコンが多いほど変換ロスが増えるので、パワコンを減らすシステム構成が重要です。
例えば、変換効率94%の蓄電池(10kWh)の電気を翌日使う場合、実際に使える電力は9.4kWhになります。さらに、10kWhを充電するには10.6kWhの電気を消費しています。
特に問題になるのは、太陽光の電力を蓄電池に充電し夜に使う場合。太陽光で直流→交流、蓄電池で交流→直流→交流と合計3回変換され、10kWhの電力は8.4kWhまで目減りし16%をロスします。
パワコンを減らしてコストダウン
パワコンの台数を減らすことで初期費用や10年後の更新費用を抑えることができます。
太陽光の場合、パワコンの相場は5.5kWhで20万円前後(kWhあたり3〜4万円)。蓄電池やV2Hはパワコン内蔵のため単体の価格は不明。太陽光と同程度として3台で60万円がパワコンの初期費用です。
「資源エネルギー庁調べ」によると、導入12年目以降でパワコンの交換件数が増加するそうです。経年したパワコンは変換効率も下がるので、10年後にはパワコン3台分の更新費用が必要です。
蓄電システム別の変換ロス
(我が家の導入設備がニチコンなので)情報がニチコンに偏って申し訳ありませんが、太陽光・蓄電池・V2Hのシステム構成による変換ロスについて検証します。
3パターンの比較表
パワコンの数が異なる3つのパターンで、10kWhの太陽光電力がどの程度目減りするかを下の表にまとめました。
ACは「AC変換して家庭で使用」、走は「EVの電気をそのまま車で消費」という意味で記載しています。変換効率は、太陽光で95%、蓄電池で96%、V2Hで91%とトライブリッドの仕様で試算。
太陽光・単機能蓄電池・V2H | 太陽光・ハイブリッド蓄電池・V2H | 太陽光・トライブリッド蓄電池・V2H | |
パワコンの数 | 3 | 2 | 1 |
太陽→蓄電→AC | ▲1.6kWh | ▲0.6kWh | ▲0.6kWh |
太陽→EV→AC | ▲2.1kWh | ▲2.1kWh | ▲0.9kWh |
太陽→EV→走 | ▲1.4kWh | ▲1.4kWh | ▲0.0kWh |
太陽→蓄電→EV→AC | ▲3.0kWh | ▲2.2kWh | ▲0.9kWh |
太陽→蓄電→EV→走 | ▲2.4kWh | ▲1.4kWh | ▲0.0kWh |
太陽光・単機能蓄電池・V2H
まずは、太陽光・蓄電池・V2Hごとに合計3台のパワコンが必要な構成です。機器を跨ぐ際に必ず交流変換が発生するので変換ロスは最多です。
太陽光電力をそのまま消費すれば5%減ですが、蓄電池に貯めてしまうと往復で16%ロスします。「太陽光電力を夜に使う」がこのパターンで、頻度も高くロスの影響も大きくなります。
頻度は少ないと思いますが、一番ロスが大きいのは太陽光電力を蓄電池、さらにV2Hを経由して家庭で使うパターン。30%も目減りし、使える電力は10kWhのうち7kWhです。
太陽光・ハイブリッド蓄電池・V2H
蓄電池・太陽光パワコンで1台、V2Hと合わせて2台のパワコンの構成。太陽光電力を直流のまま蓄電池に充電できるので、単機能蓄電池と比べると圧倒的にロスが少なくなります。(94% VS 84%)
一方で、V2Hはパワコンを挟んで使用するためロスが大きくなります。蓄電池を大きめにして、「家庭の電気は蓄電池」「EVに充電した電気は走って使う」といった運用が全体効率を上げるポイント。
問題は価格。単機能蓄電池がkWhあたり15万円〜に対して、ハイブリッドだと20万円〜。太陽光との配線費用や設置費用もかかり高額になります。補助金が少ないのも難点です。
太陽光・トライブリッド蓄電池・V2H
太陽光・蓄電池・V2Hの全てをトライブリッドパワコンの配下に設置するため、パワコンは1台だけ。太陽光電力を蓄電池・EVどちらに充電しても変換不要。放電時には90%以上使用可能です。
難しい運用方法は不要。十分な太陽光発電量があれば、それだけで電気代の大幅削減が可能。あえて考えるなら、最も変換効率の低いEV電力は走行で消費することぐらいです。
このシステムの良さは、太陽光・パワコンを先に購入し、蓄電池・V2Hは後付け可能な事。日々の電気代削減や災害時EVの大容量電力など、目的が固まった時点で追加できる柔軟さが魅力です。
次のページでは「ラインナップの違い・新築時のおすすめ設備」をまとめます