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V2H導入#2 EVで大丈夫?車は電池?EV7車種を乗り比べた結論
電気・ガソリン代の削減、災害時の電力確保に向けて太陽光・V2Hの導入を検討しています。V2Hを導入する場合、車はV2H対応のEV(PHV)車から選ぶことになります。
V2H導入を考える中、頭の片隅にひっかかる疑問が2つ。
- 本当にEVで大丈夫なのか?
- EVを蓄電池として選ぶことは正しいのか?
この疑問を解決するため、「EVのデメリット」「V2Hを諦めればどんな車を選べるのか」を念頭に各社のEV7車種を試乗。
最終的には日産アリアを注文しV2H導入を決めました。今回の記事では我が家がこの結論に至った経緯を紹介します。
この記事でわかる事
- EVのデメリットは何か?
- それでもEV導入を決めた理由
- 試乗比較したEV7車種の特徴
- 日産アリアを選んだ理由
こんな方におすすめです
- V2Hの導入を考えている方
- EVの購入を考えている方
目次(クリックで開閉)
EV導入時に気になったデメリット
いつかはEV導入と考えていましたが、いざ購入となると「本当にEVで大丈夫か?」という不安もあります。記事前半では「EV購入時に気になるデメリット」と「そのデメリットを乗り越えた理由」を紹介します。
車の選択肢が少ない
最初にEVを考えたのは家づくりがスタートした2019年末。当時購入できるEV車は「日産リーフ・三菱 i-MiEV・BMW i3・テスラ」しかなく、時期尚早と判断しハリアーHVを購入しました。
EV元年とも言われる2022年、国産・輸入のほぼ全メーカーでEVがラインナップされ、2019年に比べれば選択肢は大幅に広がりました。それでも、国内のボリュームゾーン(コンパクト・軽)では日産サクラのみ。
まだまだ「自由に選べる」とは言い難い状況です。
我が家はSUVでOK
どのメーカーもSUVを中心にラインナップ。SUVが希望の我が家にとっては好都合です。サイズ別に3〜4車種が揃うHVに比べれば見劣りはしますが、メーカー間での比較ができる点は大きな変化です。
ガソリン高騰や補助金という後押しが強いのも事実ですが、「ある程度は比較検討できる」状況になったと理解しています。
車本体の価格が高い
2022年からCEV補助金が拡充。自治体の補助金もあり価格面のハードルは随分下がりました。それでも補助金頼み。予算上限で受付終了になると「来年度への先送り」を視野に燃料代と補助金の損得勘定です。
アリアが最安539万円に対して同じ車格のX-TRAILは316万円から。200万円以上の値差があり、年間11万円のガソリン代と自動車税2万円が減っても回収するには18年。
さらに、ガソリンやHVと比べて値引きがないのもEVが割高な理由。販売店からは収益性や先々のリスクと言った意見もあり、価格での競合はもう少し先になりそうです。
V2Hで電気代も視野に
太陽光発電のある家庭なら、V2Hの導入で購入する電気代を削減できます。卒FITに限らず売電価格が下がり、買電価格が高騰している昨今では、自家消費を増やせるV2Hは効果抜群。
我が家の試算では、ガソリン・自動車税・電気代で年30万円の削減効果。V2H・EV補助金を最大に活用すれば8年程度まで回収期間を短縮可能です。
補助金頼みは変わりませんが…。
航続距離が短く充電時間が長い
HVが数分の給油で800km走るのに対し、EVは高速充電(50kW)30分でも160kmしか走りません。しかも冷暖房の強い夏冬はさらに走行距離が短くなります。あまりにも大きな違いです。
より高速な90kW充電機もありますが、まだまだ設置場所は限られています。見つかっても他の車が使用中など、すぐに充電できるとは限りません。
特に片道150kmを超える日帰り運転は、充電込みの観光・休憩計画が必要。EVに慣れるまでは、わからない事も多く付き合いづらく感じそうです。
酒好きの我が家
幸い夫婦揃って酒好きで美味しい物には酒が必須。日帰りで片道100km程度なら車も考えますが、それ以上の長距離は基本新幹線か飛行機。車での長距離移動はほぼありません。
どうしても車で移動する時は、レンタカーでハイブリッド車を借りれば事足ります。レンタカー代はかかりますが、EVで削減したガソリン代を考えれば十分に許容範囲です。
バッテリーの劣化問題
スマホの電池と同じように、EVの電池も使用に伴い劣化します。このため、各社電池劣化に対する保証を設定しています。例えば、
- 日産:8年 or 16万kmで75%(9/12セグメント)以上
- トヨタ:10年 or 20万kmで70%以上
- スバル:8年 or 16万kmで70%以上
といった具合です。
充放電頻度が多いほど劣化しやすく、V2Hのような使い方は特に厳しいと言われますが、V2Hに対する例外条項は見当たりません。
各社の長期保証は安心ですが、問題は30%程度の劣化条件。例えば20%劣化だと、100km近く航続距離が短くなった状態です。あと10%劣化するまでそのまま乗り続けるのは、なかなかの苦労がありそうです。
5年を目安に
EVの選択肢が増えたといってもまだまだEVは過渡期。EVの仕組み・インフラ・電池でも進化は続きます。現時点では5年を目処に乗り換えることにしました。
次の車を探す頃には、もっと選択肢が増えている事を楽しみにしています。
エンジンの音・振動・高揚感
最後まで悩んだポイントです。
車は生活の道具・目的地に着けば良いという考えもあります。その意味では、EV車なら災害対策も兼ね備えた優秀な道具になります。一方で、運転中に感じる高揚感も車の魅力。「EVはちょっとね」という意見もその通りです。
ある記事で「スマホと同じくEVネイティブ世代には理解されない感覚になる」という記載を見かけました。ガソリン車は富裕層の趣味という時代が来るかもしれませんし、レコードのように復刻するかもしれません。
車を運転する楽しさ
BMW iX3を試乗した時、やっぱりBMWだと感じました。EVらしさを強調するメーカー・自社らしさを強調するメーカーと各社の異なる考え方が垣間見れます。
BMWの走行感を体験した直後には「V2Hはやめてこの車で楽しくガソリン代を削減」という考えもよぎりましたが、少し時間をおいて話し合い「補助金が充実している今は、V2Hを条件に車を選ぶ事」で決定。
それでも「次に買う車はV2H抜きで選びたい」という夫婦共通の意見もまとまりました。
結局、車って何なんだろう?
色々と考えた結果行き着いたのは「車って何なんだろう?」という疑問。世代・性別・地域が違えば車に対する考え方も違います。
我が家にとって、現段階でのEVは「移動・災害対策・電気代削減のツール」なので、この目的を重視してEVを選びます。
V2H非対応の輸入車にも試乗することで、あらためて今必要な事を再確認できたと感じています。また、試乗したからこそ、次の車のイメージもできました。
1ヶ月半という駆け足スケジュールでしたが、乗り比べて良かったと思います。
試乗して感じたそれぞれの特徴
ここからは実際に試乗した7台のEVについて感じた特徴を紹介します。一覧にまとめると次の通りです。
航続距離 | 電池容量 | V2H | 価格 | 車 | 設備 | |
BMW iX3 | 508km | 80kWh | ー | 862万円〜 | ◎ | ー |
Mazda MX-30 | 256km | 35.5kWh | ー | 451万円〜 | ◎ | ー |
Nissan Sakura | 180km | 20kWh | ○ | 239万円〜 | ○ | △ |
Nissan Ariya | 470km | 66kWh | ○ | 539万円〜 | ○ | ◎ |
Subaru Solterra | 567km | 71.4kWh | ○ | 594万円〜 | △ | ◎ |
Audi E-Tron SB | 335km | 64kWh | ー | 1,145万円〜 | ○ | ー |
Honda e | 283km | 60kWh | ○ | 451万円〜 | △ | ◯ |
「車」は試乗して感じた車としての楽しさ、「設備」は平時・災害時の電気設備としての評価を記載しました。V2H非対応は対象外(ー)としています。
※マツダMX-30は車選びの段階ではV2H非対応でした。’23モデルで対応するとの内示があったそうです。
各モデルで感じた事をまとめます。
BMW iX3
運転して一番楽しかったEVですが、残念ながらV2Hには非対応。当然のようにしっかり走って曲がって止まる。30分程度の試乗でも随所で感じることができました。この点では欲しい車ダントツ1位。
内装の質感が高くきびきびした足回りなどBMWらしさ満点。カーブの立ち上がりで強く踏み込んでも、ハンドルがスッと戻ってきて不安を感じません。さらに走行感がしっかり強め。EV独特の浮遊感とは全く異なります。
プラットフォームはガソリン車と兼用。BMWのガソリン車オーナーが違和感なく乗り換えられる印象です。この点を重視しているとディーラーからも説明されました。EVになってもBMWらしさは健在でした。
マツダ MX-30
マツダの車は初めての運転ですがとても好印象。ハンドル操作と車の動きがピッタリで思うように曲がる感覚。欲しい車上位に躍り出ました。
大半のEVの運転席はハイテク感満載ですが、この車はかなり保守的な佇まい。それでもこだわりは内装の随所に見られます。プラットフォームはEV用の新設計。HV仕様はあえてエンジンを載せた日本向けです。
バッテリーは35kWhと小さく航続距離は実用で200km強。充電1回を挟んで往復300kmの中距離旅行ならOK。観音開きドアに賛否ありますが、2人乗車なら問題無し。4人乗車でも2ドアだと思えば進化です。
価格・走りのバランスが気に入りましたが、V2H非対応のため断念。断念から数週間、’23モデルへの切替えでV2H対応との内示があったそうです。時既に遅しアリアを発注済みでした。これは残念でした。
日産 アリア
2019年東京モーターショーでのコンセプト発表以来、我が家の本命として注目してきた車です。ついに発注しました。
初回試乗時は独特の浮遊感に違和感を感じましたが、EVに慣れたのか、2度目では地に足がついた印象。コーナー立ち上がりで強く踏み込むと、ハンドルの戻りが遅れ車体が振られました。iX3・MX-30では感じなかった挙動がちょっと気になります。
運転席周りはEVらしい近未来感。目を引くのは前席の足元の広さ。後部座席もハリアーよりゆったり。こういった居住空間の良さはEVならではのメリットです。
66kWhの大型バッテリーで実用400kmは期待できます。日帰り300kmなら充電無しでも十分。V2Hにも対応し要望を全てクリア。補助金を差引いて420万円はハリアーHVと同価格。驚きです。
補足です。初代リーフから10年以上が経過して、販売現場の習熟度はダントツ。EVについてカタログ無しでも話せる・普段から乗っている販売スタッフがいるのは日産だけ。消費者としては安心感が違います。
日産 サクラ
発表の数ヶ月前から覆面姿のテストドライブを何度も目撃。軽EVの発売で本格的なEV時代の到来を感じます。
内装はアリアと同じく近未来的で、かなり広々とした足元空間もいかにもEVな感じです。一番驚いたのはアクセルを踏んだ時の加速感。右折待ち、普段なら見送るタイミングでも間に合います。
20kWhの小型バッテリーで実用域130kmだとしても、普段の通勤や買い物程度ならば十分。帰って充電すれば翌日には余裕で満タンです。2.9kW充電なので、消費電力の少ない夜間なら60A契約でも充電できそうです。
家庭用蓄電池に比べれば20kWhは十分に大容量。V2Hでの効果も十分。ただし、最低10kWhは残すなど計画的な使い方をしないと、いざという時、車として使えない可能性があります。
こういった車が増えてくるとEV選びにも幅が出ます。例えば、V2H・サブ車としてサクラがあれば、もう1台のメイン車はV2H非対応でも問題なし。5年後の選択肢としては十分あり得ます。
トヨタ・スバル bZ4X・ソルテラ
トヨタ・スバル初のEVとして注目を集めていたbZ4Xとソルテラ。5月の連休明けに発売開始になりました。bZ4Xの販売方法は我が家には馴染まず。スバル ソルテラでの検討です。
運転席に座った感想は結構タイト。大きな中央コンソールもタイト感の理由だと思いますが、アリアとは真逆の室内デザイン。また、至る所にスイッチや表示が散りばめられ、慣れるまでは苦労しそうな印象です。
実際に運転して感じた事は「普通に車」です。この点は賛否ありそうです。ハリアーHVで試乗に行きましたが、そのままハリアー乗っているような既視感。普段が同じサイズの車なら違和感なく乗り換えできます。
BMWと同じく「らしさキープ」のEVですが、それで良しとするかどうかは好み。国産車なので、もう少しEVらしさが欲しかったと感じます。
ホンダ e
2020年に発売されたEVなので、価格・航続距離はどうしても他社EVには見劣りします。そのため販売店もかなり控えめな対応。
インパネに広がるワイドスクリーン・サイドカメラミラー・丸型のヘッドライト・ポップアウトのドアノブなど個性的なキャラクターは明らかに他とは違います。ハイテク可愛い、ロボット犬を彷彿とします。
渋滞気味の市街地での試乗だったので、ゆっくりまったり。RRの良さなどは体感できず。それでも、コンパクトなボディーでキビキビした走りが印象に残っています。
問題は60kWhで300km未満と極端に短い航続距離。V2Hにも対応しますが、この航続距離をみると少々不安になります。2台目として考えるにもサクラと比較すると値段がネック。ちょっと厳しいです。
AUDI E-TRON Sportsback
最後にAUDIです。希望はQ4 e-tronですが、試乗車がまだ無いということで、代わりにe-tron Sportsbackの試乗となりました。
1000万円を超える高級車らしく内装はゴージャス。カメラ式のサイドミラーでドアアッパートリムのモニターに映像が映し出されます。しかも、映像位置の調整もタッチパネル。
以前乗っていたTTはドッカンターボのイメージでしたが、この車の加速は驚くほどスムーズ。とにかく静かに、切れ目なく加速し時速100km。同じドイツ車でも、走行感強めに加速するiX3とは真逆です。
Q4 e-tronの国内販売はもう少し先。V2Hも非対応なので今回の対象から外しました。しかし、82kWh・570kmの航続距離で価格660万円はかなり魅力的。次の車候補として選択肢に入れておきます。
最後に、車選びはやっぱり楽しい
EVのデメリットやV2Hなど色々考えながらの試乗でしたが、結局のところ、初めての車はどれに乗っても楽しいです。ハリアーはリセール重視の1本釣りだったので、こういう楽しさは久々です。
これで購入するEVが決まりました。次回の記事では、「V2H設備でニチコン トライブリッド」を選んだ理由について紹介します。
三菱電機の撤退でV2Hは事実上ニチコン一択。それでも複数の商品があり導入コストも違うので、目的に合わせた選択が必要です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。