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bZ4X・ARIYA・LEAF、5年でV2H・太陽光の費用を回収できるか?
トヨタ初の電気自動車が正式に発表され、国産SUVでもEVが本格的に動き始めます。
助成金や買取価格が下がっている太陽光パネルに対して、EVやV2Hでは比較的手厚い助成金が設定されており、災害対策も兼ねて以前より導入を考えていました。
ガソリン代の高騰もあり話題のEVですが、今回はV2H・太陽光・オール電化という切り口から総コストを検証。参考として、ハリアーHVと比較しています。
コスト検証でのポイント
- 5年間のEV購入・維持費用
- V2H・太陽光の導入費用(分割払い5年)
- 5年間の電気代
5年間総費用の検証結果
- DP /導入補助事業 無し:(安い)LEAF<ハリアーHV<ARIYA<bZ4X(高い)
- DP /導入補助事業 有り:(安い)LEAF<ARIYA<bZ4X<ハリアーHV(高い)
- ハリアーHV+買電・買燃料に比べると、EV+V2H・太陽光・電気代の総コストは大して変わらない
こんな人におすすめの記事
- オール電化でV2Hの導入を考えている方
- 新築でのエネルギー計画を検討中の方
- V2Hを前提にEV導入を考えている方
目次(クリックで開閉)
- 1 V2H(ビークル to ホーム)とは?
- 1-1 EVを蓄電池として活用
- 1-2 メリット・デメリット
- 1-3 V2H設備の選択肢
- 1-4 ざっくり補助金の種類
- 2 bZ4X・ARIYA・LEAF・ハリアーHVの5年間コスト
- 2-1 5年間の車関連コスト
- 2-2 助成金のインパクトが大きい
- 2-3 自動車税も効いている
- 3 電気設備(V2H・太陽光)の5年間コスト
- 3-1 5年間で払い切った場合の設備費用
- 3-2 V2Hが条件の補助金が多い
- 4 5年間の電気代(オール電化)
- 4-1 5年間の電気代の試算
- 4-2 買電量をどれだけ減らせるか
- 4-3 燃料調整費と再エネ賦課金もポイント
- 5 5年間の総コスト比較
- 5-1 車の燃料代が1つ目のポイント
- 5-2 どの単価で電気を買うかが2つ目のポイント
- 5-3 DPやV2H導入補助は圧倒的
- 6 最後に
V2H(ビークル to ホーム)とは?
最近、高額助成金の条件とされるV2H(ビークルtoホーム)について、簡単に紹介します。
EVを蓄電池として活用
V2H(ビークル to ホーム)とは、電気自動車と家を繋ぐことで、電気自動車の蓄電池を家庭用蓄電池として代用する仕組み。
一部を除き、国産メーカーEV・PHV・PHEVの大半が対応しています。
せっかく家に充電設備を設置するのであれば、充電だけでなく放電もできるV2H設備の方が便利です。
メリット・デメリット
V2Hを導入したい我が家が感じているメリットは、
V2Hのメリット
- 家庭用蓄電池に比べて、EVの蓄電池は圧倒的に安い(家庭用蓄電池:20万円弱/kWh、EV:10万円弱/kWh)
- 1km当たりの走行コストが安い(EV:6km/20〜30円、ガソリン:10km/160円、HV:20km/160円)
- 大容量蓄電池で太陽光・深夜電気を最大限活用し、電気代を節約できる
- 災害時・停電時にも太陽光併用で長期間電気を使える(LEAF:13kWh/日消費で4日間、太陽光10kW発電で20日前後)
- 平均的な車の買替え頻度ならば、蓄電池も7年程度で更新できる(車の買替え平均:R2年 7〜8年)
EVの良さ、太陽光の良さを活かし、家庭用蓄電池の弱点を補うイメージです。
一般的に言われるデメリットは、
V2Hのデメリット
- 家に駐車スペースが必要(戸建・駐車場付きが前提になる)
- 車が家にないと充放電できない(売買電が必要、VS家庭用蓄電池)
- V2Hの設備が高額(工事費込みで安くても70万円程度)
- 車としてのEVに疑問(航続距離・音など)
我が家がデメリットとして感じるのは#3ぐらいですが、一定期間でコストが回収できれば初期投資の問題です。
V2H設備の選択肢
現時点で選べるメーカー・製品は限られています。
- ニチコン:トライブリッド
- ニチコン:EVパワーステーション(ベーシック・プレミアム・プレミアム+)
- デンソー(ニチコンOEM):V2H 充放電機
- 東光高岳:SmanecoV2H
※三菱電機もスマートV2Hを販売していましたが、2021年3月をもって終売となっています。
太陽光と組み合わせる場合は、新しくなった1のニチコントライブリッドがベスト。
トライブリッドパワコンが太陽光のパワコンも兼ねるので設備投資が抑えられます。
太陽光・蓄電池・EVの3つの電池をまとめて制御するので、余計な手間や無駄な変換ロスが削減できます。
コストメリットが高いのは2のニチコンEVパワーステーション。
スタンダードの値上げが発表され(2022年6月注文分より)、プレミアムとの値差が縮まり、相対的にプレミアムの魅力が上がりました。
スタンダードとプレミアムの違い
停電時(自立運転時)の使い方に大きな違いが出ます。
- 200V供給(スタンダード:不可=特定負荷、プレミアム:可)
- 出力(スタンダード:3kVA、プレミアム:6kVA)
- 太陽光電力のEVへの蓄電(スタンダード:不可、プレミアム:可)
- その他、ケーブル長やスマホ連携にも違い
プレミアムとプレミアム+の違い
自立運転の起動方法
- プレミアム:EVステーションを起動するために、車のアクセサリーソケットへの配線が必要
- プレミアムプラス:ワンクリックで起動できので、追加配線は不要
自立運転時の電圧、太陽光連携が最大の違いです。災害・停電時の使い方を基準に選定することになります。
ざっくり補助金の種類
ざっくりと2022年に個人(法人以外)が活用できる補助金です。
- CEV補助金:日産ARIYA・LEAFで最大85万円まで補助。自家用のみが対象。
- V2H充放電設備 導入補助事業:設備代の1/2(上限75万円)と工事費(上限40万円・個人)
- 地方自治体の補助金:各都道府県・市町村で異なる
- DP(ダイナミック・プライシング実証事業):設備代の1/2(上限75万円)と工事費(上限40万円)
予算枠が限られていますが、EVとV2Hをセットで導入する場合、かなり高額の補助金がもらえます。
デメリットにあった高額なV2H設備代は補助金でほぼ相殺。
来年度以降は分からないので、EVのラインナップも充実し始める今年は良いタイミングです。
bZ4X・ARIYA・LEAF・ハリアーHVの5年間コスト
まずは車にかかるコストの試算です。
5年間の車関連コスト
bZ4Xがサブスク契約(KINTO・最低4年)のみなので、比較しやすいように他3車種は残クレ。全車、5年目の車検を通さずに返却を前提に試算しています。
費用項目 | bZ4X | ARIYA | LEAF | ハリアーHV |
①車両代(月) | 88,220円 | 79,700円 | 58,400円 | 64,982円 |
②自動車保険(月) | ー | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
③自動車税(減税・年) | ー | 6,500円 | 6,500円 | 11,250円 |
④自動車税(通常・年) | ー | 25,000円 | 25,000円 | 45,000円 |
⑤メンテナンス(年) | ー | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 |
⑥車検費用(3年目) | ー | 90,000円 | 90,000円 | 90,000円 |
⑦CEV補助金 | 月額に込み | ▲850,000円 | ▲850,000円 | ー |
⑧自治体補助金 | ▲100,000円 | ▲100,000円 | ▲100,000円 | ー |
年間費用 | 1,058,640円 | 1,131,400円 | 875,800円 | 941,034円 |
5年間費用 | 5,040,080円 | 4,778,500円 | 3,500,500円 | 4,930,170円 |
(備考)
- ARIYA・LEAF・ハリアーHVは残クレ(支払い60回、金利4.9%、登録諸費用など込み)、bZ4Xはサブスク(Kinto)
- 年間費用:((①+②)×12ヶ月+③+⑤)
- 5年間費用:((①+②)×12ヶ月+③+⑤)+((①+②)×12ヶ月+④+⑤)×4年+⑥+⑦+⑧
- 5年目の車検を通さず、メーカー指定の残価で返却。KINTOも同条件で返却する。
助成金のインパクトが大きい
年間費用ではハリアーHVが2番目に安いが、5年間費用(補助金算入)ではbZ4Xと並ぶ高価な選択肢。
bZ4X・ARIYA・LEAFはCEV補助金(85万円)と自治体補助金のインパクトが大きい。(KINTOは最初の4年間で均等割りし月額から減)
- ARIYA B6は530万円なので、95万円(⑦+⑧)を引くと435万円。ハリアーHVのZグレードならほぼ同じ価格。
- LEAFに至っては60kWh搭載のe+でも、395万円でハリアーHVより安くなる。
- bZ4Xの月額利用料はARIYAと比べて1割高ですが、これでCEV補助金を4年分に均等割で算入済み。5年間費用になると、ARIYAの方が補助金分安くなります。
定価ではかなり高額なEVですが、助成金を含めると意外とHV車と遜色ない価格に落ち着きます。
自動車税も効いている
自動車税の減税効果も地味に効いています。
エンジンが無いEVの自動車税は、最安の25,000円/年(総排気量1リットル以下相当)。
さらに、登録翌年度は75%の減税となり6,500円/年。
このため、ハリアーHVの自動車税と比べると、5年間の総額で8万円以上の差ができます。
電気設備(V2H・太陽光)の5年間コスト
続いては、V2Hと太陽光のコスト試算。ハリアーHVはV2Hは使えないので、太陽光のみでの試算です。
5年間で払い切った場合の設備費用
費用項目 | bZ4X | ARIYA | LEAF | ハリアーHV |
太陽光(5kWh) | 1,500,000円 | 1,500,000円 | 1,500,000円 | 1,500,000円 |
V2H | 1,000,000円 | 1,000,000円 | 1,000,000円 | ー |
自治体補助金 | ▲250,000円 | ▲250,000円 | ▲250,000円 | ▲50,000円 |
年間費用 | 523,212円 | 523,212円 | 523,212円 | 313,920円 |
5年間費用 | 2,366,060円 | 2,366,060円 | 2,366,060円 | 1,519,600円 |
(備考)
- 太陽光・V2Hは我が家の仕様(要逆勾配架台)での実際の見積価格。
- 設備費用を5年間の均等分割(金利1.8%)にて試算。
- 補助金は5年間費用にのみ算入。自治体V2Hで20万円、太陽光に対して5万円の補助金。
V2Hが条件の補助金が多い
自治体ごとに補助金の規定は異なりますが、神奈川県の場合、V2H設備の導入に対して20万円(補助率1/3)の補助金が設定されています。
さらに、対象となるEV・PHEVを同じ年度に購入する場合、一律10万円が上乗せされます。
太陽光パネルの設置に対しては、数万円程度の補助金を比べると、国・自治体がV2Hに対してウェイトを置いている事が良くわかります。
これに、DP実証事業助成金やV2H充放電設備導入補助事業を加えると、V2Hの導入費用は大幅に圧縮でき、デメリットの#3はなくなります。
5年間の電気代(オール電化)
車の使用頻度にもよりますが、昼間は太陽光とEV電気、夜は深夜電気という組み合わせは、電気代を大幅に下げます。
5年間の電気代の試算
費用項目 | bZ4X | ARIYA | LEAF | ハリアーHV |
売電費用(年) | ▲21,240円 | ▲21,240円 | ▲21,240円 | ▲53,100円 |
買電費用(年) | 66,000円 | 66,000円 | 66,000円 | 120,000円 |
車燃料・電気(年) | 40,000円 | 40,000円 | 40,000円 | 110,000円 |
年間費用 | 84,760円 | 84,760円 | 84,760円 | 176,900円 |
5年間費用 | 423,800円 | 423,800円 | 423,800円 | 884,500円 |
(備考)
- 家庭の年間消費電力量は7,000kWh、電気単価は30円/kWh(再エネ・燃調込み)として試算。
- 太陽光・V2H(EV):発電量6,000kWh、売電1,200kWh(17.7円)、自家消費4,800kWh、買電2200kWh(30円)
- 太陽光のみ(HV):発電量6,000kWh、売電3,000kWh(17.7円)、自家消費3,000kWh、買電4,000kWh(30円)
- 車燃料・電気:年間10,000km走行として試算。ガソリン(20km/L、160円/L)、電気(6km/kWh、20円/kWh)
買電量をどれだけ減らせるか
売電の買取価格が大きく下がっているので、太陽光の電力をどれだけ自家消費に回せるかが重要なポイント。
冷暖房を24時間稼働させる我が家では、V2Hを導入することで、太陽光電力の自家消費を3割程度に増やせると考えています。
深夜電気・太陽光を活用できると、エコキュートを日中に動かすことで深夜の騒音問題を回避することもできます。
燃料調整費と再エネ賦課金もポイント
電気を買わない事のメリットはもう1つ。燃調費と再エネ賦課金がかかりません。
再エネ賦課金は、しばらくは少額ずつ上がり続けます。燃料調整費は、最近の世界情勢の影響を受けて乱高下。
TEPCOのオール電化契約の場合、売電と深夜電気の単価はほぼ同じですが、調整費と再エネを含めると深夜電気の方が高くなる事も。
- 燃調費が大きくマイナス(昨年など):太陽光の電力はあえて自家消費せず売電。(燃料調整:▲5円、夜買15円:売17.78円)
- 燃調費が高騰しているタイミング(今年):積極的に自家消費に回し買電を減らす(燃料調整:+3円、夜買23円:売17.78円)
電力価格に応じて売買電のバランスを調整する事も可能です。
5年間の総コスト比較
車・電気設備・電気代をまとめた結果です。
費用項目 | bZ4X | ARIYA | LEAF | ハリアーHV |
車費用(5年) | 5,040,080円 | 4,778,500円 | 3,500,500円 | 4,930,170円 |
電気設備費用(5年) | 2,366,060円 | 2,366,060円 | 2,366,060円 | 1,519,600円 |
電気・燃料代(5年) | 423,800円 | 423,800円 | 423,800円 | 884,500円 |
5年間の総コスト | 7,829,940円 | 7,568,360円 | 6,290,360円 | 7,334,270円 |
太陽光 | 完済 | 完済 | 完済 | 完済 |
V2H | 完済 | 完済 | 完済 | 無し |
(安い)LEAF<ハリアーHV<ARIYA<bZ4X(高い)という結果になりました。
車関連費用はLEAFを除いてほぼ横ばいなので、電気・燃料代が5年間コストの優劣を決めた結果。驚きはLEAFのコストパフォーマンス。ハリアーHVから太陽光コスト・売電を外すとLEAFのコストとほぼ同じ。設備費用は回収できています。
どのEVでもハリアーHV同等の数字が出ていますが、V2H設備費用も含めてこの総コスト。
ハリアーHVで5年過ごすなら、ARIYAかLEAFで5年過ごせばV2Hも含めて同じ費用。予想以上の結果です。
車の燃料代が1つ目のポイント
ポイントになるのは車の燃料費。年間走行距離が長い人ほどメリットが出ます。(家庭での充電は充電時間が長いので、ある程度で頭打ちにはなります。)
太陽光や蓄電池ではなかなか元を取りづらいとされますが、V2Hでガソリンまで試算コストに含められると、状況が大きく変わります。
この点は、重要な試算ポイントだと感じます。
どの単価で電気を買うかが2つ目のポイント
2つ目のポイントは買電単価。割高な昼間電気の購入を最小限に抑え、深夜・太陽光での消費を増やすと効果的。
さらに、太陽光電力を多く使うほど、再エネ賦課金や燃調費の影響を受けなくなります。
EVという大型蓄電池が導入できると、どの単価の電気を使うかという自由度が大幅に広がります。
DPやV2H導入補助は圧倒的
今回の試算には含めていませんが、さらにDP(ダイナミック・プライシング実証事業)やV2H充放電設備導入補助事業を活用すると、V2Hの設備費用はほぼ無くなります。
先ほどの試算では、V2Hには20万円の補助金しか見込んでいません。
EVの試算に90万円の補助金を算入すると5年間費用は大幅に変化し、(安い)LEAF<ARIYA<bZ4X<ハリアーHV(高い)という結果になります。
是が非でも取りたい補助金です。
最後に
トヨタからbZ4Xが発売されるタイミングで、HVを含めた4車種のV2Hコスト試算を行いました。
オール電化の我が家では、災害時の電気確保を考えるととても重要なV2H。EVの方が総コストが安いという予想外の結果ですが、導入メリットを明確にできて安心しました。
国の方針や世界的な流れを見る限り、今後EVへのシフトが加速していきます。
いずれ導入するEV・V2Hであれば、早い段階で導入したほうが補助金も潤沢でメリットは大きいです。
対応車種の拡充や(不確定ですが)補助金も期待できるので、今年から数年ぐらいが導入メリットの大きいタイミングだと思います。