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オール電化にして後悔?1年半暮らして感じたメリット・デメリット

今までガス・電気併用で生活してきた我が家にとって、オール電化は「理屈上は良い」と分かっていても「不安が残る」決断でした。そんなオール電化生活もようやく1年半が経過。

色々トラブルもありましたが、実際に暮らしてみて「オール電化を選んでよかった」と感じています。今回の記事では次の3点について紹介します。

今回の記事のポイント

  1. オール電化を選ぶ時に感じた不安とその結果
  2. 最終的にオール電化に決めた理由・メリット
  3. 住んでから分かったオール電化のデメリット

オール電化を検討中の方、これから新築の方の参考になればと思います。

オール電化に決めるときに感じた不安

人生初のオール電化、経験が無いので不安もありました。オール電化で決める時感じていた不安をまとめます。

全部が電気、光熱費が大幅に増える?

以前住んでいた賃貸マンション(電気・ガス併用)の年間光熱費は15.5万円でした。これに対し、新居(オール電化)の年間光熱費は18.9万円と約2割増です。光熱費を心配していた理由は次の通り。

光熱費が増えると考えた理由

  • 建物面積が2.5倍(賃貸:48㎡/新居:134㎡)
  • バスタブも1.5倍に大きくなる
  • 大型床暖房(75畳)が入る
  • 上下階・左右の部屋が無く暖房費が高い

5割増しぐらいを覚悟していましたが思ったほど増えず一安心。参考まで、賃貸マンションと新築での光熱費は次の通りです。

年間消費電力 年間光熱費 平均単価
マンション(ガス電気) 4,164kWh 155,398円 37.3円/kWh
新築平屋(オール電化) 6,662kWh 184,500円 27.7円/kWh
差額 2,497kWh 29,102円 ▲9.6円/kWh

※賃貸マンション(2020年)・新築平屋(2021年)

お湯切れリスク、使いたい時にお湯がない?

引っ越してから1年半経ちますが湯切れは一度もありません。冬は風呂にお湯を入れると、残湯目盛りは1/4まで下がりますが湯切れには至りません。

2人暮らしだとエコキュートのタンクは通常370Lですが、災害時の生活水確保のためひと回り大きい460Lを導入しました。実勢価格では数万円しか変わりません。設置スペースがあれば、湯切れ対策・災害対策でひと回り大きめのタンクがおすすめです。

大きなタンクと電気代

エコキュートはタンク内の温度センサーでお湯(45℃以上)と水の割合を把握しています。さらに日々の使用湯量もモニターし必要湯量も把握。深夜になると不足する湯量を自動で計算して沸き上げる仕組みです。使用湯量が一定であれば、タンクが大きくなっても沸き上げる湯量は変わりません。このため、タンクサイズと消費電力はあまり関係がないとされます。

IHは調理しづらい?

使いにくいと賛否が分かれるIHクッキングヒーターですが、(調理器具を選ぶ点は除いて)慣れれば使いやすいと感じています。

湯沸かしの早さなどメリットはいくつかありますが、1番良いのは夏に部屋の温度が上がらないこと。賃貸では12畳程度のDKでしたが、冷房を入れてもガスコンロの火力で室温がグングン上昇。今はコンロを使っても室温変化はありません。大きなメリットです。

深夜電気に縛られる生活はストレス?

安い深夜電気を使うために昼の家電使用を控えるなど、生活自由度に制約がでると感じていました。実際生活してみると、エコキュートも床暖房も自動運転。食洗機・洗濯乾燥機もタイマー機能が充実。無理して深夜電気を使うという感覚はありません。

生活の中で違和感は感じない

はじめてのオール電化生活ですが、ほとんどの事を設備が自動でやってくれるので、ガス併用の生活と違いは感じません。

コラム:オール電化×食洗機で食器が増える?

唯一戸惑ったのは食洗機。深夜だけで動かす場合、日中に食器や調理道具が不足します。探し回った挙句、食洗機の中で未洗いで見つけた時は思わずため息が出ます。追加で数セット用意してからは気になりません。

オール電化で大型食洗機導入の場合、食器・道具類を余分に収納できるように設計に余裕をもたせると安心です。

オール電化に決めた理由・メリット

不安がある一方でオール電化にメリット・魅力も感じていました。オール電化に決めた理由・感じていたメリットを紹介します。

火を使わない安全な生活

宅内で火を使わずに生活できる事は大きなメリットだと感じました。三井住友海上の資料によると、

火災原因のTOP5(令和元年)

  1. キッチンコンロ周り(13.6%)
  2. タバコ(9.6%)
  3. 電気配線(6%)
  4. 配線器具(5.6%)
  5. ストーブ(5.3%)

ガスコンロの安全装置が進化して火災リスクは下がってますが、それでも、火を使わずに生活できる安心感は大きいです。火災保険もオール電化は割引です。

キッチンとリビングを一体的にデザインしたい

ガスコンロを設置するキッチンは火気使用室に該当し、平屋や最上階キッチン(平屋や2階建ての2階)以外では壁・天井の仕上げ材に制限(準不燃材以上)がかかります。

「オープンキッチンでLDKの天井材をキッチンまで広げて一体感をだしたい!」という場合、平屋・最上階キッチン以外では、選択肢が限られ値段も高い「準不燃材(以上)の天井・壁材」しか選べません。火気使用室にあたらないオール電化では比較的自由に建材を選べます。大きなメリットです。

キッチンだけ仕上材を切り替える

準不燃以上の制限は火気使用室だけなので、キッチンとの境で天井材を切り換えればクリアです。問題はどうやって切り替えるか?平面で仕上材を切り替えると見切り・小口(切断面)が目立ち、見た目が良くありません。

よく見かける対策は「キッチンの天井だけを折下げて段差(入隅)で仕上材を切り替える」方法です。ハウスメーカーのモデルハウスでも割と見かけます。ダクトスペースも確保しやすく、かっこいい見た目、切り替え見切りと一石三鳥のデザインです。

IHコンロは掃除が楽、調理効率もUP

ガスコンロの掃除では、五徳を取り付ける溝周りの汚れ掃除が面倒でした。最近のガスコンロはかなりフラットですが、やはりIHヒーターの掃除しやすさは別格です。この点は本当に楽になったと感じています。

また、余計な凹凸がないので作業場所になるのも便利なポイント。コンロ周りの限られたスペースを多目的に使えるので、とても重宝しています。

電気は創れるエネルギー、災害に強い家

電気が止まると何もできなくなることが、オール電化のデメリットと言われます。しかし、裏を返すと、電気さえあればガスがなくても普段通りに生活できる事がオール電化のメリットです。高耐震住宅・太陽光パネル・EVがあれば「在宅避難しやすい災害に強い家」が作れます。

太陽光パネルも普及し「電気を創る」は当たり前です。今後EVや家庭用蓄電池が普及すれば、(電気代の高騰もあり)発電電力の自家消費率は大幅に上がります。「電気は原則自家発電、自家消費、不足する時だけ買う」というのも遠い未来ではないと感じています。

実際に住んでメリットを実感できた

オール電化を選ぶ上で考えたメリットは住み始めて実感することができました。特に掃除のしやすさ・調理スペースの確保は、毎日のことなので日々便利さを実感しています。

コラム:災害レジリエンスとマイクログリッド

大半の電力は発電所から繋がる広域送電網(グリッド)で供給され、「大規模・集中型」の電力システムと言われます。発電設備を集中・大型化でき効率が良い一方で、災害で停電すると広範囲に被害が及ぶデメリットもあります。そこで注目されているのが「地域マイクログリッド」です。

地域の送電網をグリッド(広域送電網)から切断し、地域内の太陽光発電・蓄電池・電気自動車を活用して地域内電力の自給自足を行うもので、「分散型電源」とも呼ばれます。他地域の停電による影響を受けないため、地域の災害耐性(レジリエンス)向上策として期待されてます。

V2H(EVから家に電力供給する)設備には高額な補助金が設定されていますが、申請書には「災害時の協力要請に(可能な限り)応じる」という条件が含まれています。脱炭素社会で語られるEVですが、実は「地域マイクログリッドの中核として災害対策への期待も大きい」というお話でした。

オール電化を選んで分かったデメリット

最初から分かっているデメリットは諦めもつきますが、想定外だと頭を悩ませます。オール電化に決めてから知った、住み始めてから分かったデメリットをまとめます。

お掃除浴槽は使えない!

自動で風呂掃除をしてくれる夢のような設備「ノーリツ お掃除浴槽」です。ノーリツの製品ですが、TOTOやトクラスでもオプション設定可能です。残念ながらエコキュートの場合水圧不足で設定不可とのことでした。今となっては「お掃除楽々人大」でも十分に楽です。

絶対に設定すると夫婦で決めていたオプションなので、設定不可と知った時は呆然としました。当時風呂掃除担当だった自身にとっては「オール電化をやめようかと思う」ほど。調べてみると施主責任で設置した方もいるようで、平屋の我が家は勝負できたかも。

ヒートポンプの騒音で苦情発生!

この問題は深刻です。お隣さんに迷惑をかけてしまいました。設定の仕方次第である程度は回避できますが、やはり設計時、設置場所をしっかり考えることが一番です。特に複数台のヒートポンプを同時稼働すると共鳴して騒音が増大するそうです。要注意です。

導入費用が高い、将来の更新費用も高い!

タンクサイズの変更は数万円程度ですが、エコキュート本体は数十万円します。さらに十数年後のオール電化では設備更新で設備の再導入が必要です。まだ2年目なのでわかりませんが、10年経過した頃からトラブルも増えてくるようです。

オール電化プランで契約するためにはエコキュートの導入は事実上必須。ガス配管を用意していないオール電化住宅は、このプラン一択なので壊れたら買い替えるしかありません。資金が許せば念の為ガス配管を設置するのも一案です。

大容量契約で基本料金が高い!

実は、ガス契約が不要になので基本料金が減ると期待しました。残念ながらこの目論見は失敗。ガスの基本料金はなくなりましたが、補って余りあるほど電気の基本料金が増えました。

平均的なガス使用量は月30㎥程度なので基本料金は1,000円程度。これに対して電気の基本料金は1kVa(10A)あたり286円です。賃貸では30A(858円)でしたが、今は10kVa(2,860円)と3倍以上です。さらに今後EV・V2Hを導入すると+2kVa(572円)。残念な結果です。

想定外のデメリットはなんとかしたい

お掃除浴槽と設備代は仕方がないと諦めました。しかし、想定外の騒音問題と基本料金はなんとかしたいところです。騒音は太陽光・蓄電池でなんとかできますが、基本料金は今の所避けられません。

基本料金無料のLooop電気に期待していましたが、昨今の電気代高騰で新規契約停止中。早々と燃調費上限も撤廃し、電力単価は驚くほど上がっています。今後、市場連動型料金プランに移行するということで、太陽光・EVが揃い我が家の電力需要が把握できてから再検討する予定です。

コラム:太陽光・EVと市場連動型料金

Looop電気が導入するという「市場連動型料金プラン」ですが、飛行機運賃のように電力需要の多い時間は高く・少ない時間は安くと、需給に応じて電気単価が刻々と変動します。いわゆるダイナミック・プライスという仕組みです。

一般的に需要が多いのは朝・昼前後・夕方〜夜で、23時以降早朝までは供給過多です。この点はオール電化と同じですが、市場連動型プランの単価変動はよりダイレクトで大きくなります。そこで期待されるのが太陽光と蓄電池、EV(V2H)。

値段の高い昼間は太陽光で自家消費、日没後は蓄電池・EVに貯めた太陽光・深夜電力を使用。安い時間になったら再び充電。こうする事で、市場連動で一段と安くなる深夜電気を最大限活用することができます。ただし、万が一、昼に買電すると大幅なコストアップというリスクもあります。

何よりも重要なことは自分達の電力需要傾向を把握すること。また、EV不在時は大型電池も不在なので、車の使用頻度も考える必要があります。さらに、発電が減り需要が増える冬は、絶対量が足りないので特に注意が必要。いずれにしても、大きな可能性に期待大のプランです。

最後に、オール電化にして良かったか?

オール電化に決める前、決めた後、住んだ後に感じたことをまとめました。最終的にオール電化にしてよかったのか?この記事をまとめます。

メリットが実感できて総じて満足

何よりも期待していたメリットがはっきりと感じられることが大きいです。心配していたことは杞憂に終わり、全体としては満足しています。足元では電気代が大幅に高騰し1月の電気代は驚くような金額でしたが、ガスも大幅に高騰し光熱費が上がる状況は変わらず。

今後、太陽光・蓄電池・EV・V2Hと立て続けに導入する計画です。電気を買う限りは燃調費や再エネ賦課金がついて回るので、いかに買わないかが今後の電気代削減の鍵になります。値上げラッシュで厳しいですが、これから新築ならばオール電化と太陽光のセットは優先順位は高いです。

騒音問題は要注意

オール電化を導入する方は絶対にチェックが必要。毎日顔を合わすお隣さんです、ご近所トラブルはしんどいです。住宅密集地では厳しいと思いますが、出来るだけ周りの家に重ならないようにヒートポンプを設置することです。万が一苦情が来たら初動が肝心。音の問題は個人差が大きいので、とにかく拗らせない事が一番。多少電気代が高くなっても、暫定的にでも状況を改善することが大切です。

基本料金をなんとかする方法

この点は自分達ではなんともなりませんが、Looop電気のリリースを読む限り、今後に期待できると考えています。今できることは、必要設備を導入し自分達の電気需要をしっかり把握することです。

最後に

2022年初から海外の政治・経済情勢の影響を受け、日本でも電気を始めエネルギーコストの高騰が続き、家計の負担は増すばかりです。頭を悩ませている方も多いと思います。一方で、この電気代高騰の裏で、50年に1度とも言われる電力を取り巻く環境の大変革が進んでいます。

2022年3月には省エネ法・電気事業法を含める5つの法律が改正されました。特に「省エネ法の掲げる需要シフト」は、旧来の需要平準化から一歩進んだ現実的な取り組みです。さらに4月には配電ライセンス制度が始動、地域マイクログリッドに向けた動きが本格化します。

V2HやEVに対する潤沢な補助金もこういった事が背景にあります。どこかの記事で読みましたが、確かに「電気を湯水のように使う時代は終わった」のかもしれません。今後新築される方は、気密・断熱に加えて、「どのエネルギーを使うか」といったエネルギーマネジメントも重要なポイントになります。

最後まで読んで頂き有難うございます。

次回のエネルギー関連記事は、トヨタBZ4X・日産ARYA・LEAFを太陽光・V2Hの観点から深掘り。ハリアーHV+オール電化に比べて、どれだけコストメリットがあるのかを試算しましました。

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