騒音苦情へ対策を考える中で感じた事は「エコキュートって意外と融通が効かない!」という事。ただし、「機能に不満」や「お薦めしない」という意味ではありません。
「過去2週間の使用状況を学習」「指定した時間帯に電気代を最小に稼働」「お湯が足りなくなったら自動でわき上げ」などの機能がついているので、通常ならば全部お任せで何の不満もありません。
しかし、こういった「スマートな機能」に反する事をやりたい時は問題。「深夜に動かすとうるさいので、電気が高くても深夜以外で動かしたい」となると、スマート機能の壁に阻まれ、スマートじゃない設定方法が見つかりません。
結果としては「他目的用の3つの機能を併用し、深夜時間の稼働を止める」裏技で対応しました。
今回は、(需要があるか分かりませんが)エコキュートを「あえて昼間電気で動かす方法」について紹介します。
メーカーも「なるほど確かにできる」と唸った(困惑した)合わせ技。エコキュートの騒音で困っている方は、昼間稼働も考えてみてはいかがでしょうか?電気代も思ったほどかかりません。
注記1:三菱電機のエコキュートを前提に書いています。他メーカーについては、取説でわかる範囲の情報で記載しています。
注記2:我が家のエコキュートは「三菱電機 SRT-S465」です。
注記3:稼働時間を変更するのは、外気温が低く高出力で稼働する冬季(12月〜3月)のみで考えています。
5連載の題目
- 電気代値上げ!この冬、電気代はいくらだったか?
- 蓄熱式床暖房を24時間稼働にした電気代
- 騒音で苦情発生!エコキュート・床暖房の騒音対策
- 騒音対策で昼間にエコキュートを動かす方法(今回の記事)
- 結局、オール電化にはどんなメリットがあるのか?
目次
昼間電力で稼働する設計ではない
割安な夜間電気を使ってお湯を沸かし(魔法瓶のような)タンクに溜めて、水で適温に冷ましながら使うのがエコキュートの仕組み。
都度操作しなくても経済的に稼働できるように、スマート機能が沢山ついています。しかし、こういった機能は夜間の稼働が前提です。
夜間の稼働を回避する設定について、何度もメーカーと話しましたが、お湯切れを心配しているのか、想定外の使い方に困惑したか、終始歯切れの悪い回答でした。
まずは、「簡単に昼間稼働に変更できない」設備の事情を説明します。
家電のようなタイマー機能はない
家電製品ならば「朝6時にご飯が炊き上がる」といったタイマー機能は当たり前です。エコキュートでも「風呂のお湯はり」なら、タイマー機能で設定できます。しかし「タンク内の満水わき上げ」となると、そんなビシッとしたタイマー機能はありません。
最初にエコキュートで設定することは、
- 契約電力会社の電気プラン(深夜・昼間・ピークはそれぞれいつか?)
- 希望の湯量設定(おまかせ・多め)
- 稼働させないピーク停止時間帯の(有無)
あとは、お湯の使用状況・湯残量・外気温・水温・電気料金・お湯切れリスクを総合的に考えて、エコキュートが適時自動でタンク内のわき上げを行います。
このため、「〇〇時にわき上げスタート/完了」ではなく、「〇〇時から〇〇時の間で必要なだけ」という経済性を優先した稼働になります。外気・水温が低く湯残量が少ない時は、いつもより早く高出力で稼働します。
いつ動くかは機械任せになるので、騒音を避けるため特定の時間に動作させるという設定はできません。
ピーク停止機能も使えない
エコキュートの設定には「ピーク停止」という機能があります。数少ない「動かさない」と明確に設定できる項目です。これが夜間時間に設定できれば、深夜のエコキュート稼働を抑制できます。しかし、取扱説明書によると、
- ピーク停止の時間帯は、電力会社の各電力プラン毎にプリセットされていて変更できず
- 電力プランのマニュアル設定もありますが、「夜間時間帯以外の時刻でピーク停止時間帯を設定できます」との注記
期待しましたが、ピーク停止機能では深夜稼働を止めることはできませんでした。
もっと詳しく
「ピーク停止」という機能がある理由は2つ。
- 基本料金が最大需要電力(30分間の最大消費電力)に連動する場合:朝や夜など電力消費の多い時間に稼働すると最大需要電力が大きくなり基本料金が上がる
- 契約単価にピークタイム単価がある場合:夜間電力<昼間電力<ピーク電力と単価が3本立ての場合、一番高いピークタイムの電力消費を抑える
こういった目的だと、(消費電力が少なく単価の安い)夜間電力時間帯にはピーク停止が設定できないのも頷けます。
太陽光による昼間シフト
太陽光発電を活用すれば、昼間に太陽光電力で湯を沸かし夜間の稼働はなくせるのではないか?残念ですが、それほど簡単ではないようです。
三菱電機・パナソニック・ダイキン・日立と一通り確認しました。どのメーカーでも少なくともタンク半分は夜間電気で沸かす仕様。メーカーによっては7割まで沸かすものもあります。
この背景にあるのは湯切れリスク。翌日の天気予報が外れた場合、昼間の電気で沸かすことになり電気代が高額になる可能性があります。このため、最低でも半分は夜間に沸かす設定になっているそうです。
残念ながら、夜間の稼働を止める事はできません。
もっと詳しく
2021年4月に発売されたコロナのエコキュートでは、タンクの最大80%のお湯を太陽光の電気で沸かせるそうです。
「普段の朝の使用状況」「HEMS・アプリ経由で取得した天気予報」を駆使することで、夜に沸かす割合を20%まで減らす事ができる仕組みですが、実際に減らせるかは条件次第。
三菱電機のお天気リンクEZ・AIも同じような仕組みですが、三菱電機では〇〇%とは記載していません。会社毎のカラーが出ています。
唯一の方法は手動操作、でも面倒
メーカーと話し合った結果、夜間時間の稼働を避ける唯一の方法は「毎回手動で操作する事」で、具体的には
- 風呂への湯はり後、タンク内の湯残量を確認
- 翌朝までの湯量が残っていれば、「わき上げ停止日数」を「2日間」で設定
- 翌朝「満タンわき増し」でタンクを満タンまでわき上げる
- これを毎日繰り返す
この操作を毎日行えば夜間の稼働を回避することができますが、毎夜・毎朝設定するのはかなり面倒。当面の対策として採用し、もっと上手くコントロールする方法を探します。
ココがポイント
- タンク残量が少ない場合は「満タンわき増し」を行い、残量が十分になった時点で「わき上げ停止日数」を設定(わき増しは自動的にキャンセル)
- 「わき上げ停止日数」を設定しないと、タンクが満タンでも湯温が下がると自動的に再わき上げを行います。想定外の稼働を避けるために「わき上げ停止日数」が必要
- 「わき上げ停止日数」の設定当日もカウントされるので、翌朝まで停止する場合は「2日間停止」とする
- 翌朝、「満タンわき増し」を始めると、「わき上げ停止日数」は自動的に解除される
次のページでは「自動で夜間稼働を回避する裏技」を紹介します。