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平屋の不安#3 平屋には勾配天井?我が家が標準天井高を選んだ理由

「お洒落な平屋」で見つかる写真は、高窓からサンサンと太陽がかがやく勾配天井ばかり。

記事にも「開放感」という3文字が並びます。そんな中で、2.4m高の標準高天井を選んだ我が家。

この選択は間違いなのか、我が家に開放感はないのか、不安に感じた時期もありました。

平屋の不安シリーズ第3弾」今回は「平屋の天井の話」です。

この記事のポイント

  • 平屋で勾配天井が選ばれる理由
  • 勾配天井のデメリット
  • 我が家が標準高を選んだ理由
  • 実際に標準高の平屋に住んで感じる事

こんな人におすすめ

  • 平屋の設計段階の方
  • 天井のデザインがいまいち決まらない方
  • 勾配天井のコストで悩んでいる方

前回の記事では、「外から丸見えになりやすい?平屋の視線対策」について紹介しました。

平屋で勾配天井が選ばれる理由

風が抜ける事の図

おしゃれな平屋の代名詞とも言える勾配天井。勾配天井が選ばれる理由は、平屋の強みを活かしながら弱点を補うことができるから。

まずは、勾配天井が人気な理由をまとめます。

変化に富んだ空間をつくれる

水平方向に大きく広がる平屋住宅。こだわりの大空間リビングの天井も、ただ真っ平らに広がるだけでは味気なく感じます。

そんな時は勾配天井、空間のイメージが一変します。

木目のような大柄で規則的なクロスを合わせると、天井高の変化に応じて見える柄の大きさも変化。

水平基調でのっぺりしやすい平屋の天井が、いきいきと躍動し空間に立体感が生まれます。

平屋の弱点を補う「勾配天井の魅力」です。

日射を取り込みやすい

「屋根が大きく、家の内部まで太陽光が届きにくい事」が平屋の弱点。

勾配天井で、南側の天井を上げ高窓を設置する事で、高窓から太陽光をたっぷり取り込むことができます。

「2階を支えないため開口部を作りやすい」のは平屋の強み。

勾配屋根は平屋の強みを活かしながら弱点を補う強力な選択肢です。

通気性が良くなる

採光と同じく、水平方向に広い平屋は通気面でも苦労します。

エネルギーコストが高騰している昨今。省エネルギーに向けて、断熱・気密性能と並び通気といったパッシブ性能も重視されます。

風上の窓を狭く・風下の窓を広くすると通気性が大幅に向上します。

これに加えて、風上・風下で窓に高低差を作ると、空気の対流を積極的に活用でき通気性はさらに向上。

勾配天井は高窓を設置しやすいので、日射のみならず、通気面でもパッシブ性能向上に役立ちます。

勾配天井が設置しやすい

平屋で勾配天井が選ばれる1番の理由は、勾配天井を設置しやすいから。

勾配天井は屋根の形を生かして設置するため、2階建以上の建物の場合、最上階以外では勾配天井を設置できません。

このため、好きな場所に勾配天井を設置できるのは2階のない平屋の特権。

平坦な天井空間に変化を与え、採光・通気面でも平屋の弱点を補うことができる。

その上設置しやすいとなれば、平屋天井の代名詞のように頻繁に見かけるのも頷けます。

勾配天井を選ぶデメリット

平屋の弱みを補ってくれる勾配天井ですが、当然ながらデメリットもあります。

勾配天井のデメリットは、2.7mや3m超の高天井にも共通。デメリットへの対策を考えて選ぶと、満足度の高いこだわりの天井に仕上がります。

コストがかかる

まずはコストの問題。勾配天井は、標準高の天井比べて、坪単価で2万〜4万円高くなるそうです。

「天井材がないので安くなるのでは?」と思ってましたが、そんな簡単な話ではないそうです。

コストアップになる要因は、

  • クロス施工費:壁面積が増え、施工に手間のかかる天井が上がり面積も広くなる(高価なクロスはさらにUP)
  • 化粧梁:梁を隠す天井材がなくなるので、梁にも意匠が必要。化粧梁になるとコストは上がります
  • 建具:高窓の追加して日射を良くする、天井高に合わせて窓や建具もフルハイトのオプション仕様に変更
  • 断熱工事:外気温との緩衝スペースになる小屋裏がなくなります。屋根断熱の強化はコストアップ

特にオプション仕様の窓・建具は、値引き幅が小さく予想以上にコストを押し上げます。

先述のメリットを満たすためには結構な費用が必要。考え出すと夢は広がりますが、最後に待っているのは仕分けです。

勾配天井を決めた当初の目的を考えて、オマケに目を奪われない冷静さが必要です。

照明設計が難しい

床までの距離が変化する勾配天井、希望の空間の設計イメージによっては照明計画でかなり苦労します。

具体的には、光の輪郭・陰影・明るさにメリハリを効かせたいケース

この用途で最適な照明器具は、光の広がりを抑えた狭角のダウンライト。しかし、天井高さが変化すると焦点を合わせ難くく、思うよう決まりません。

梁にスポットライトを設置している写真もありますが、構造上の梁の位置に縛られるため、照明設計のために配置を変える事はできません。

壁全体を照らす柔らかく暖かい空間は問題ありませんが、光と影・メリハリの効いた硬質な空間を希望する場合、立ち止まって考える必要があります。

断熱性能・光熱費に影響

屋根・天井の断熱方法は大きく2種類、勾配天井の場合は天井裏がないので屋根断熱になります。

  • 天井断熱:天井裏に断熱材を設置するので、必要な断熱性能に応じて断熱材を増減できる
  • 屋根断熱:屋根に断熱材を設置するので、断熱材の厚みは最大でも屋根の厚みまで

屋根材(瓦・スレート・鋼板など)でも断熱性能は調整できますが、屋根面積によっては重量増で耐震性にも影響します。

さらに、勾配天井で室内高を高くすると冷暖房を効かせる空間が広くなるので、光熱費は割高になります。

高窓による換気、シーリングファンによる対流促進などの対策が必要です。

屋根勾配・天井長さ次第

空間を広く見せる効果のある勾配天井ですが、ある程度の屋根勾配、または、天井長が必要になります。

勾配天井に併設したロフトから、料理中のお母さんに子供が手を振る写真。このためには勾配天井の高低差は最低175cm(ロフト高140cm+床厚35cm)が必要。

天井長 屋根勾配 両端の高低差 屋根面積(1寸比)
6m 1寸 60cm
6m 2寸 120cm +1.5%
6m 3寸 180cm +3.9%
6m 4寸 240cm +7.2%

屋根面積が広く割高とされる平屋。緩勾配の片流れで屋根面積を極力小さくしたいですが、この写真のシーンを実現するには3寸以上の屋根勾配が必要です。

片流れ3寸勾配屋根は1寸に比べ屋根面積が5%程度増えます。その結果、施工費でも同程度割高に。ここは注意点です。

ただし、配置調整で長手12mに勾配を設置できれば、1.5寸勾配でも180cmの高低差を確保でき、施工費1%強の増加で抑えられます。

勾配天井らしさを発揮するには、十分な屋根勾配と天井長さが必要になります。

(もちろん、太陽光パネルの設置条件にも影響します。)

標準天井高を選んだ理由

下がり壁のない窓

平屋・勾配天井を切り口にメリット・デメリットを紹介しましたが、ここからは、我が家が標準天井高を選んだ理由を紹介します。

当初は2.7mの高天井を希望していましたが、考えた結果、2.4mの標準高に落ち着きました。

天井に予算をかけられない

シンプルに予算が足りなかったということ。

当初見積もりには、2.7mの天井高が含まれています。坪単価で2万円強といったところ。

さらに、天井高いっぱいのハイサッシ窓・フルハイトの建具や壁紙クロスはエコフリースを希望。

全てを合わせた総額は、坪単価2万円程度では済みません。完全に予算オーバーでした。

中庭と対照的に水平に広がる空間

我が家のモデルとなった建物は、デンマークの建築家「Halldor Gunnløgsson」の自宅。

低く構えた平屋で、フルハイトの大窓から広がる空・海、屋内は水平方向の広がり、落ち着いた天井の板張りが印象的なデザインです。

幸い予算内で広い土地が手に入ったので、水平の広がりを建物で表現することができます。

さらに、20畳と大きな中庭を設置することで、文字通り抜けるような解放感を中庭で実現することもできます。

このことから、中庭の開放感と低く構えた室内空間の対比を強く表現するという選択肢が生まれました。

絞った照明で落ち着いた空間

室内空間では、お気に入りの家具がスポットライトで浮かび上がる、美術館の展示のようなイメージも持っていました。

天井照明は最低限に絞り込み暗い部分は暗いままに

狭角のダウンライトが必要な場所を、はっきりとした光の輪郭を持って照らし、手元照明が必要な時はフロアライトを併用する。

このイメージを実現するには、床までの距離が短い標準高の方が作り込みやすいと考えました。

余計な下がり壁はいらない

寝室やランドリーといった明確な目的をもったスペース以外は、中庭を含めて一体的な空間にしたいと考えました。

LDK・回遊廊下・玄関・中庭には、扉も下がり壁も一切設置せず

これを実現する上で課題となったのは、高天井にした時の中庭を囲む窓。

幅4m超のサーモスXトリプルは特注仕様で驚くほど高額。これに2.7mのフルハイトをつけようものなら、中庭の窓だけで高級外車1台分です。

それならば、天井高を2.4mに抑えて天井いっぱいの窓を選ぶ方が、コスト面では現実的だと感じました。

板張りの素材感を感じたい

「シンプル希望だけど変化のない天井は嫌」という相反する希望を持っていた我が家。グンログソン邸と同じく板張り天井を希望しました。

最終的には、厚みの異なる2種類のチーク材を交互に貼り付け、シンプルながらも変化のある天井を選択。

せっかくのチーク材なので、素材感・凹凸感・木目の陰影を感じたい。そう考えた時、天井までの距離が遠くなる高天井は不要と考えました。

あえて標準高を選んだ理由の1つです。

実際に暮らしてみてどうか?

中庭の空の写真

建築実例で見かけるおしゃれな平屋とは違い、チーク貼りの標準高天井を選んだ我が家。

実際に生活し始めて、設計時の考えは正しかったのか確認します。

中庭に出た瞬間の広がり

2.4mの標準高天井ですが、天井一杯のフルハイトサッシを導入したことで、家のどこにいても空を身近に感じることができます。

朝起きて中庭のテラスドアを開いた瞬間、新鮮な空気が流れ込み頭上には真っ青な空が広がります。

巣穴から出てきた野生動物のごとく、中庭のフレッシュな空気の中でストレッチ。

高天井でどんな生活ができたか分かりませんが、落ち着いた屋内空間と抜ける空の屋外空間のメリハリは気に入っています。

落ち着いた屋内空間、空まで抜ける屋外空間が隣り合わせ。気分に応じて居場所を選べるのは快適です。

真っ直ぐ広がる空間

水平方向への広がりを強調するために、天井チーク材と床タイルの貼り方向を揃えました

回遊廊下からLDKへ繋がる部分は、我が家でも最も直線距離の長い空間。この広がりを強調するため、貼り方向はここを基準に考えています。

寝室前やロフト階段前からLDKを見た時の空間は狙い通り。LDK壁面まで視線が一気に抜けます。

LDKでは、中庭に向かって配置した天井材が自然に視線を誘導。下がり壁無しにこだわった効果がありました。

PK家具との調和

床に座る日本文化と椅子に座る欧米文化では、天井高に対する考え方も違います。

椅子に座った状態だと視線位置が座面高45cm高くなります。結果、椅子文化の方が高い天井が必要です。

しかし、LDK中央に配置したPK(ポール・ケアホルム)の家具は、座面高35cm程度と低め。

プロジェクタースペースにあるチーフテンチェアも座面高は35cm。

どちらの椅子も背板・座面が大きく傾いたラウンジチェアなので、深く腰掛けるとアイポイントはさらに低くなります。

予想外でしたが、これらの家具は標準高天井でも全く違和感ありません

冷暖房費の削減

天井高による冷暖房効果は、比較対象がなく分かりません。

36畳の大空間LDKですが、夏はエアコン1台、冬は床暖房だけ部屋中が温まります。一定の効果はあるだろうと想像しています。

はっきりと分かる事は、中庭のお陰で冬でも日差しはたっぷり。家の四隅に設置したスリット窓と高窓で通気も十分です。

標準高天井でも窓配置を考えれば、十分なパッシブ性能を確保できます。

最後に、平屋の天井選び

勾配天井には、勾配天井でないと実現できない特別な価値もあります。しかしこだわり過ぎるとかなりのコストアップです。

家づくり全般に共通することですが、本当に必要なものは何なのか、しっかり家庭内で話し合うことが大切だと感じます。(出来たか?と聞かれるとあまり自信はありません)

他の選択肢を選び考えてみると、それはそれで希望を実現できる事もあります。

大半の人は一生に一度の家づくりです。これはこうだと決めつけず、余裕を持って事前にじっくり、色々な建物に接しておくと楽しい家づくりになると思います。

次回「平屋の不安」では、「不足しがちとされる平屋の収納」について紹介します。

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