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V2H導入#3 V2H・蓄電池選びで重視した、たった1つのポイント

電気代・ガソリン代が高騰する中、1年前倒しで太陽光・蓄電池・V2H・EVの導入を決めました。

V2Hは事実上ニチコン一択の状況で悩みませんが、V2Hに組み合わせる蓄電システムはニチコンだけでも複数種類あります。

最初は何が違うのか分かりませんでしたが、比較検討した結果、優れた充放電効率を理由に「トライブリッド蓄電システム」を選びました。

今回の記事では、「パワコンの数・変換効率」を切り口に「なぜトライブリッドを選んだか?」について紹介します。

この記事でわかる事

  • パワコンの数と電気の変換ロス
  • 蓄電システムごとの変換効率
  • ニチコンの家庭向け製品の違い
  • 新築時におすすめの導入設備

こんな方におすすめです

  • V2H・太陽光・蓄電池の導入を考えている人
  • 災害・電気代対策を考えている人
  • 新築でどの設備にするか考えている人

パワコンは少ない方が良い

パワーコンディショナー、略してパワコンです。太陽光・蓄電池・V2H、それぞれで必須の設備ですが色々と問題があるのも事実。「パワコンは減らすべき」の理由を紹介します。

そもそもパワコンって何?

直流ー交流を変換すること」が主な機能でインバーターとも呼ばれます。太陽光・蓄電池・V2H(EV)が直流に対し、発電所から送られてくる電気(系統電力)は交流です。

パワコンは、太陽光など直流機器と分電盤の境目に設置され、直流機器から分電盤に向かう電気を直流→交流に、分電盤から蓄電池・V2Hに向かう電気を交流→直流に変換する機器です。

その他、系統電力と機器を切断する機能(系統連系保護機能)や(太陽光の場合)発電効率を最大化する機能(最大電力点追従制御)もついています。

直流(DC)・交流(AC)とは?

直流(DC)はプラス側・マイナス側が決まっていて一定方向に電気が流れるのに対し、交流(AC)はプラス・マイナスや電気の流れが一定の周期で変化します。

家庭に届く系統電力は送電に適した交流ですが、直流の方が半導体とも組みやすく大半の家電はACアダプターや内蔵インバーターを使って交流を直流に変換しています。

最近人気のサーキュレーターでは交流・直流が選べますが、機能や電気代の違いにも直流・交流の違いが出ています。

変換ロスってどういう事?

パワコンやインバーター、ACアダプターで交流・直流を変換する時、電気の一部が熱に変わり放出されます。これが変換ロス。分かりやすいのはACアダプター。長時間使うとかなりの発熱です。

ACアダプターで20%前後のロス、ポータブルバッテリーでも10〜20%のロスがあります。バッテリーの場合は充電・放電と2回変換するので、効率90%でも往復で19%の電力を失うことになります。

電気を効率的に使うには「直流交流の変換は最小限」がポイントです。

パワコンが少なければロスは少ない

電気代削減のため蓄電池やV2Hを導入する人も多いと思いますが、経由するパワコンが多いほど変換ロスが増えるので、パワコンを減らすシステム構成が重要です。

例えば、変換効率94%の蓄電池(10kWh)の電気を翌日使う場合、実際に使える電力は9.4kWhになります。さらに、10kWhを充電するには10.6kWhの電気を消費しています。

特に問題になるのは、太陽光の電力を蓄電池に充電し夜に使う場合。太陽光で直流→交流、蓄電池で交流→直流→交流と合計3回変換され、10kWhの電力は8.4kWhまで目減りし16%をロスします。

パワコンを減らしてコストダウン

パワコンの台数を減らすことで初期費用や10年後の更新費用を抑えることができます。

太陽光の場合、パワコンの相場は5.5kWhで20万円前後(kWhあたり3〜4万円)。蓄電池やV2Hはパワコン内蔵のため単体の価格は不明。太陽光と同程度として3台で60万円がパワコンの初期費用です。

「資源エネルギー庁調べ」によると、導入12年目以降でパワコンの交換件数が増加するそうです。経年したパワコンは変換効率も下がるので、10年後にはパワコン3台分の更新費用が必要です。

蓄電システム別の変換ロス

(我が家の導入設備がニチコンなので)情報がニチコンに偏って申し訳ありませんが、太陽光・蓄電池・V2Hのシステム構成による変換ロスについて検証します。

3パターンの比較表

パワコンの数が異なる3つのパターンで、10kWhの太陽光電力がどの程度目減りするかを下の表にまとめました。

ACは「AC変換して家庭で使用」、走は「EVの電気をそのまま車で消費」という意味で記載しています。変換効率は、太陽光で95%、蓄電池で96%、V2Hで91%とトライブリッドの仕様で試算。

太陽光・単機能蓄電池・V2H 太陽光・ハイブリッド蓄電池・V2H 太陽光・トライブリッド蓄電池・V2H
パワコンの数 3 2 1
太陽→蓄電→AC ▲1.6kWh ▲0.6kWh ▲0.6kWh
太陽→EV→AC ▲2.1kWh ▲2.1kWh ▲0.9kWh
太陽→EV→走 ▲1.4kWh ▲1.4kWh ▲0.0kWh
太陽→蓄電→EV→AC ▲3.0kWh ▲2.2kWh ▲0.9kWh
太陽→蓄電→EV→走 ▲2.4kWh ▲1.4kWh ▲0.0kWh

太陽光・単機能蓄電池・V2H

まずは、太陽光・蓄電池・V2Hごとに合計3台のパワコンが必要な構成です。機器を跨ぐ際に必ず交流変換が発生するので変換ロスは最多です。

太陽光電力をそのまま消費すれば5%減ですが、蓄電池に貯めてしまうと往復で16%ロスします。「太陽光電力を夜に使う」がこのパターンで、頻度も高くロスの影響も大きくなります。

頻度は少ないと思いますが、一番ロスが大きいのは太陽光電力を蓄電池、さらにV2Hを経由して家庭で使うパターン。30%も目減りし、使える電力は10kWhのうち7kWhです。

太陽光・ハイブリッド蓄電池・V2H

蓄電池・太陽光パワコンで1台、V2Hと合わせて2台のパワコンの構成。太陽光電力を直流のまま蓄電池に充電できるので、単機能蓄電池と比べると圧倒的にロスが少なくなります。(94% VS 84%)

一方で、V2Hはパワコンを挟んで使用するためロスが大きくなります。蓄電池を大きめにして、「家庭の電気は蓄電池」「EVに充電した電気は走って使う」といった運用が全体効率を上げるポイント。

問題は価格。単機能蓄電池がkWhあたり15万円〜に対して、ハイブリッドだと20万円〜。太陽光との配線費用や設置費用もかかり高額になります。補助金が少ないのも難点です。

太陽光・トライブリッド蓄電池・V2H

太陽光・蓄電池・V2Hの全てをトライブリッドパワコンの配下に設置するため、パワコンは1台だけ。太陽光電力を蓄電池・EVどちらに充電しても変換不要。放電時には90%以上使用可能です。

難しい運用方法は不要。十分な太陽光発電量があれば、それだけで電気代の大幅削減が可能。あえて考えるなら、最も変換効率の低いEV電力は走行で消費することぐらいです。

このシステムの良さは、太陽光・パワコンを先に購入し、蓄電池・V2Hは後付け可能な事。日々の電気代削減や災害時EVの大容量電力など、目的が固まった時点で追加できる柔軟さが魅力です。

類似商品の違いや注意点

V2Hはほぼ一択のニチコンですが、パッと見重複していると感じる製品もあります。また、他社との違いも気になります。簡単にまとめました。

2種類のV2Hの違い

V2Hに関してはEVパワーステーションとトライブリッドV2Hの2種類があります。重要だと感じた違い次の4点。

パワーステーション トライブリッド
自立運転の最大出力 5.9kWh+α 5.9kWh
自立運転に自動切替 手動切替 自動切替
EV充電時の出力 5.9kWh 最大9.9kWh
補助金 (パワコン内蔵)本体のみ 最大本体+パワコン

最大出力はパワコン能力が上限になります。太陽光・蓄電池・V2Hを変換するトライブリッドに対して、EVパワーステーションはV2Hのみ。太陽光や蓄電池のパワコンは別にあるので+αの供給能力になります。

蓄電池の電力が使えるトライブリッドと異なり、EVパワーステーションは停電時には電源が落ちます。外部電源や内部蓄電池(プレミアムプラス)を使って再起動が必要です。

EV充電時の出力は太陽光・蓄電池の電力を直流で融通できるトライブリッドが系統電力+αで大きくなります。EVパワーステーションはパワコンの能力5.9kWhが限界です。

補助金によってはV2Hパワコンを補助対象とするものもあります。その場合、パワコン内蔵のパワーステーションと外付けのトライブリッドV2Hでは対象額が異なります

V2H導入時の契約アンペア

V2Hを導入する場合、電力の契約Aを上げる必要があります。特にオール電化の場合、深夜時間帯はエコキュートをはじめ大電力を消費。EVを深夜電気で充電する場合、3〜4kVaの契約A増が必要です。

先程のトライブリッドやパワーステーションの5.9kWhや9.9kWh出力では、200V換算でも30〜50Aが必要。エコキュート・家電・床暖房の電力が重なるので、10kVa以上の契約でないと厳しいです。

基本料金は1kVaあたり286円なので、V2H導入により基本料金が800〜1,100円上がります。試算の際は忘れずに加味してください。

パワーウォールとEV有りオール電化

最後に蓄電池で人気のパワーウォールですが、全負荷で使用できるのは契約電力80A未満です。オール電化の場合、8kVa(80A)以上の契約も多く全負荷は期待薄。

特にEVの急速充電器を設置している場合、ほぼ10kVa以上の契約で特定負荷になります。自立運転時の家中バックアップは期待できないので注意が必要です。

新築時に導入するならどれ?

予算が不足した我が家は、新築時にこれらの設備の導入は諦めました。もし予算があれば何を入れればよかったのか、思い起こして考えてみました。

日々の電気代を減らす

太陽光+トライブリッドパワコン
数百万円単位の買い物なので費用回収は早めたいところ。電気代が高騰しているので、自家消費を前提に太陽光が最有力。電力単価が上がるほど電気を買わないメリットは大きくなります。

ポイントはパワコンにトライブリッドパワコンを選ぶ事。値段は高いですが、住宅ローンやローン控除を活用できるのは新築時だけ。先々蓄電池やV2Hを導入しても、変換ロスが少ない直流運用が可能です。

2つ注意点です。1つ目は固定資産税・取得税が高くなる事。後付けの工事費と比べてどちらが良いか検討が必要。2つ目はニチコンの自然災害補償。トライブリッドパワコンと同時設置機器だけが対象です。

燃料費削減・災害時電力

V2H+EV(PHEV)
災害時の電力も心配です。ガソリンも高騰しているので、燃料費削減と災害時電力の確保を兼ねて、V2H・EV(PHEV)の導入も選択肢です。我が家の新築時と違ってEVの選択肢もかなり増えています。

年間の走行距離が多い人ほど、燃料費削減の効果は高くなります。さらに、V2Hであれば最大9.9kWhでの充電が可能です。走行距離が長く災害時電力を重視する家庭ほど導入効果が高くなります。

新築でV2H補助金はハードル高い

新築V2Hの注意点は補助金。CEV補助金の場合、機器の発注・設置工事は交付決定通知の後が条件。さらに、年度の1月末日までに実績報告が必要です。申請期間が5月末〜10月末なので、申請できる施主は絞られます。

さらに、自治体では請負契約自体を決定通知後とする補助金もあります。契約から引渡まで1年近くかかる新築の場合、補助金を活用して導入するのはかなりハードルが高く感じます。

蓄電池単体でのコスト回収は難しい

新築で蓄電池を導入する場合、メリットは住宅ローンとローン控除のみ。電気を創る太陽光やガソリン代を減らすV2Hと異なり、蓄電池単体で光熱費を減らすことはできません。費用回収は難しい設備です。

また、金額が少ないとはいえ、太陽光電力の買取制度は続いています。お余剰電力をお金に変える事はできるので、自家消費率を上げるだけの蓄電池は後回しでも良いと思います。

さらに、新居での余剰電力量は住んでみないと分かりません。昼の冷暖房効果が維持できれば、夜の冷暖房費を抑える事できます。蓄電池の費用は新築時しかできない断熱・気密向上に回すのも1案です。

新築時は太陽光、後からV2H+EV

補助金も含めて総合的に考えると、新築時は太陽光+トライブリッドパワコンがおすすめです。V2Hを含めた蓄電は、新居での消費電力が把握できてから考えると、過不足少ない設備導入が可能です。

平屋住宅の場合、太陽光を後で設置しても工事費は少なめ。取得税・固定資産税対策として「全てを後回し」も選択肢です。フラット35の場合、リフォームローンとの金利差は小さく、実質的な差はローン控除ぐらいです。

最後に

パワコンの台数・変換ロスを軸に蓄電システム選びのポイントを紹介しました。まとめると以下の通りです。

ポイントのまとめ

  • 変換ロスを避けるためにはパワコンの数はできるだけ少なくする
  • パワコンの台数が多い場合、最大で3割の電力を失う
  • 新築時には将来の拡張性を考えた設備導入が重要

EVを含め蓄電システムは発展途上ですが、その分リスクをとって導入する人には手厚い補助金が用意されています。設備導入時は、パワコンの台数に着目して選んではいかがでしょうか?

次回は、「絶対活用すべき補助金」について。EVやV2H設備導入時に活用できる「CEV補助金・地方自治体の補助金」について、ポイント・申請手順・注意点をまとめます。

最後まで読んでいただき有難うございました。

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