床暖房は不要?温水蓄熱式(エコヌクール)のメリット・設置費用・電気代
- 2021年6月13日
- 2023年10月9日
実は床暖房の設置には反対でした。ネットの情報を読んでも「使わなくなる」といった記事も多く、高い費用を払い、希望の無垢床を諦めてまで入れるものではないと考えたためです。
しかし、いくつかの事情が変化し床暖房に対する考え方も変化。入居後に実際に使ってみた結果、快適そのものです。
今回は「床暖房は必要か?」という疑問に対して、反対が賛成に変わった理由や設置費用、電気代について紹介します。
この記事でわかる事- 否定的だった床暖房のデメリット
- 考えを変えた理由、温水蓄熱式床暖房のメリット
- 温水蓄熱式の仕組み・費用・電気代
- エアコンとの電気代比較
- これから新築の人
- 床暖房の導入を考えている人
- 床暖房の設置費用を知りたい人
- 床暖房の電気代を知りたい人
目次(クリックで開閉)
床暖「反対」から「賛成」に変わった理由
寒がりの妻は床暖房は絶対必要との意見でした。一方で、いくつか気になる点があり、どうしても同意できずにいました。
最終的には導入に賛成。新居では床暖ライフを満喫しています。「同意できなかった理由」「賛成に変わった理由」「最終的に導入を決めた理由」を順番に紹介します。
床暖房に同意できなかった理由
2019年に環境省が実施した「地域別最もよく使う暖房機器調査」によると、関東甲信地方では
- エアコン(40.4%)
- 電気カーペット/こたつ(20%)
- 灯油ストーブ(16.0%)
- 電気/ガスストーブ(計14.4%)
で全体の90%を占めます。一方で、電気・ガスを含む床暖房の割合は6%とかなり少数派。(集合住宅を含むため戸建のみだと若干数字が変わります。)
「新築時以外では導入しずらい事」も理由ですが、新築時でもデメリットを考え導入しない人も少なくありません。家づくり当初、導入に否定的だった理由は次のとおりです。
導入費用が高額
まず気になるのは導入費用。床暖房の種類(熱源・方式)にもよりますが、導入にかかる費用は
- 1畳あたり5〜10万円
- 15畳導入すると75〜150万円
- 35坪の住宅で坪単価で2〜4万円の増額
30万円前後で購入できる30畳エアコンと比べると2.5〜5倍。差額で導入できるオプションを考えると導入メリットは見当たりません。
省エネ性能は年々向上
家電は毎年新しいモデルが発売されそのたびに省エネ性能・機能が進化します。エアコンに比べると床暖房設備の買い替えはハードルが高く、そういった進化の恩恵を受けにくくなると考えていました。
さらに、床暖房があっても冷房としてエアコンは必要。冷暖房が2つの機器(床暖房・エアコン)に分けるため、導入・メンテナンス・更新では2重に費用がかかります。この点も床暖房に否定的だった理由です。
温まるのに時間がかかる
エアコンは直接暖気を部屋に送り込むため、比較的早く部屋を暖める事が来ます。一方で、床暖房は床から間接的に部屋の空気を温めるので、どうしても時間がかかります。
夫婦共働きのため、(コロナ禍の在宅は別として)平日は夜遅く帰ってきて数時間後には就寝という生活スタイル。床が暖まる頃には布団に入ります。生活スタイルに合わないと考えていました。
無垢床との併用は厳しい
一部床暖房と併用できる無垢床材も販売されていますが、一般的には無垢板と床暖房の組み合わせはNG。温度変化が床材の反りや変形の原因となるためです。
アカシア無垢床材の柄が好きで「床はアカシア無垢材」と2人で決めていましたが、「床暖房ダメなら無垢は不要」と妻は早々に離脱。頭の作りが違うのか、簡単には諦めきれず床暖には反対でした。
床暖房賛成に変わった理由(温水蓄熱式)
導入に反対だった床暖房ですが、家に対する要望の変化や温水蓄熱式を知ってから考えが変わりました。賛成派に変わった理由は次のとおりです。
床は全面タイルに変更
無垢床希望でしたが、モデルになる北欧建築家の自宅と出会い、床材はその家と同じ全面タイルに変更。夏は冷たくて気持ち良いタイルですが、冬はキンキンに冷えて触れたものではありません。
屋内で靴を履かない日本の住宅ではタイル床には床暖房が必須です。タイルは熱伝導が良く床暖房との相性は抜群。ハードルだった無垢床がなくなりタイルで追い風。床暖房が俄然優勢になります。
ヒートポンプの省電力で長時間稼働
すぐに暖まらず使えないと思っていましたが、蓄熱式床暖房の場合、一旦床が温まると数時間は暖かさが持続します。深夜・午後に稼働させれば、朝の外出前・夜の帰宅後も暖かい状態を維持できます。
長時間稼働による電気代が気になります。温水式床暖房は電力効率の高いヒートポンプを利用するので、ヒーター式床暖房と比べて半分以下の電力消費。エアコンと比べても同程度。
「生活スタイルに合わない」というデメリットもクリアになりました。
広い範囲を均一に暖められる
広い範囲を均一に暖められるのが温水式床暖房の利点。他の暖房機器にはないメリットです。家中の配管に温水を循環する仕組みなので、場所によって時間差はありますが全体を均一に暖めることができます。
最近話題になっているヒートショックですが対策のポイントは寒暖差を作らない事。床暖房で家全体を暖めれば居室・脱衣所の寒暖差もなくなります。親が泊まる時、自分の将来も含めて床暖房のメリットです。
意外と導入コストは安かった
1畳あたり10万円と思っていましたが、意外と安かったのも前向きに考えられた理由。さらに温水配管の寿命は建物と同じぐらい。50年という人もいるそうです。
ヒートポンプは15年程度で更新が必要ですが、大型エアコン1台と同程度の価格。突然壊れると大変ですが、計画的な更新ならば大騒ぎする値段ではありません。
導入を決めた1番の理由
床材をタイルに変更したことが、床暖房導入に傾いた最も大きな理由です。真冬にマンションの屋外タイルに裸足で立ってみたら良く分かりました。極寒です。
椅子でなく床に座りたい時、裸足になりたい時もあります。室内で床下断熱もあるので屋外タイルほど冷えませんが、真冬に冷たいタイルは避けたいと思いました。
温水蓄熱式床暖房の仕組みと導入費用
導入を決めた温水蓄熱式床暖房の仕組みと導入費用を紹介します。仕組みは至ってシンプルでトラブルは少なそうです。
温水蓄熱式床暖房の仕組み
温水蓄熱式床暖房は「温水システム」「温水循環パイプ」「蓄熱モルタル」の3つで構成されます。
- 温水システム:
ヒートポンプで集めた熱で配管内を流れる不凍液を温める - 温水循環パイプ:
温められた不凍液は温水パイプを通って家中を循環 - 蓄熱モルタル:
温水パイプの周りにあるモルタル層が温水により温められる - モルタルに熱を渡して冷えた不凍液は熱交換器に戻り再度温められ循環
温水パイプ(図左下・ポリエチレン製のホース)は一筆書きのように途切れることなく配置されますが、面積が広い場合は複数のホースを並列に使用。我が家は3本のホースが並置されています。(床暖面積75畳)
手前にあるのが熱交換器、奥の2台の室外機がヒートポンプです。
床暖房面積が50畳までは「エコヌクールピコ」という室外機1台の温水システム。70畳を超えると室外機2台の「エコヌクールレオ」というシステムが必要です。
我が家は床暖房だけで使っていますが、冷水を循環させることで冷房としても使用可能。この場合は冷暖房パネルヒーターという別部品が必要になります。
建物でかかった費用
施工面積123.5㎡の床暖房で、建物側にかかった費用は合計130万円。
- 管材・配管施工費で30万円
- 蓄熱モルタルで100万円
土間コンと比べればかなり高価なモルタルですが、施工には高い技術を要するそうです。基礎職人によると「床暖房のモルタルを仕上げる職人の技術は別格」だそうです。
設備(エコヌクール)にかかる費用
三菱電機の「エコヌクールレオ(70畳タイプ)」ではヒートポンプ室外機が2台。設置用の基礎工事も必要です。かかった費用は合計70万円。
- 基礎・設置・接続工事で15万円
- エコヌクールレオの機器代金が50万円
建物側の費用と設備費用を合わせて、200万円が温水蓄熱式床暖房(123.5㎡ ≒ 75畳)の導入コストになります。1畳あたりの費用は2.6万円とネット情報(1畳10万円)とは大きな違いです。
最初の冬にかかった電気代
HEMSを導入していないので、床暖房を使用していた12月〜3月の電気代と冷暖房なしの5月の電気代で比較します。
12〜3月(暖房期間)と5月(冷暖房無し)の比較
消費電力(月) | 消費電力(日) | 電気料金 | 平均単価 | |
12月(31日) | 996kWh | 32.1kWh | 20,553円 | 18.9円/kWh |
1月(31日) | 1,157kWh | 37.3kWh | 23,663円 | 18.3円/kWh |
2月(28日) | 832kWh | 29.7kWh | 18,133円 | 18.4円/kWh |
3月(31日) | 664kWh | 21.4kWh | 15,692円 | 19.3円/kWh |
5月(31日) | 383kWh | 12.3kWh | 11,612円 | 22.8円/kWh |
※4月の途中から床暖房の使用をやめたので、4月は比較対象から外しています。
床暖房の消費電力・電気代
12月〜3月の消費電力・電気代から5月分を引くと次のような結果です。
電力増分 | 電気代増分 | 平均単価 | |
12月 | +613kWh | +8,941円 | 14.6円/kWh |
1月 | +774kWh | +12,051円 | 15.6円/kWh |
2月 | +449kWh | +6,521円 | 14.5円/kWh |
3月 | +281kWh | +4,080円 | 14.5円/kWh |
オール電化なので深夜電気の消費量が増えると電力単価は安くなります。各月の平均単価に比べて増加分の平均単価が下がっているので、増加分は主に深夜電気の増加と理解できます。
エコキュートの出力増も2割程度ありますが大半は暖房費。エアコンのピンポイント使用(2割)も加味して、増加分の6割(1,270kWh=18,956円)が床暖房だと考えています。
エアコンと床暖房、どちらが安いか?
LDK・個室エアコン・床暖房システムの時間あたりの消費電力を比較しました。エアコンは期間消費電力から割戻した値、床暖房は安定時消費電力を参照しています。
LDKエアコン(MSZ-AXV5620S) | 個室エアコン(MSZ-GV2220) | 床暖房(VEH-712/406×2) | |
時間あたり消費電力 | 0.40kWh | 0.14kWh | 0.91kWh |
エアコンの方が消費電力は少ないですが、同じ範囲を暖める場合個室エアコンは3台必要。この条件だと(0.4kWh+0.14kWh×3台)= 0.82kWhとなり、床暖房とほぼ変わりません。※それでもトイレ・脱衣所はエアコンが無く暖房範囲は少なくなります。
LDKエアコン+個室エアコン1台と床暖房の電気代を稼働時間ごとに比較しました。(31日間・電気単価25円/kWh)
LDK+個室1台 | 床暖房 | 差額 | |
10時間/日 | 4,185円 | 7,053円 | +2,868円 |
12時間/日 | 5,022円 | 8,463円 | +3,441円 |
16時間/日 | 6,696円 | 11,284円 | +4,588円 |
意外と違いが小さいので床暖房期間の4ヶ月だけなら、エアコンではタイル床は暖められないですし暖房は全て床暖房でも良いかもしれません。
最後に、温水蓄熱式の全面床暖房がおすすめ
温水蓄熱式床暖房について良い点・悪い点・導入コスト・電気代について紹介しました。実際に生活し始めて床暖房の快適さに驚いています。全フロアが1階になる平屋は、特にその恩恵を受けやすいと思います。
エアコンの電気代と比べても数倍になるような事はありません。新築時は予算との戦いだと思いますが、可能であれば是非全面床暖房をお勧めします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。